其処に楽しそうな笑い声が響く。
二人並んで座りながらそれぞれグラスを持ち、間にはバーボンのボトル。
「へぇ、マリアも意外と過保護というか何と言うか」
「昴だってそこまでとは思ってなかったわ」
上機嫌に杯を重ねるかえでとサジータ。
ふと会話が止まって。
次の瞬間、静かに微笑んでかえでが言った。
「…昴と一緒に居てくれてありがとう。サジータ」
「ど、どうしたんだよ?突然」
急に改まったかえでに慌てるサジータ。
「ずっとあなたに言おうと思っていたのよ」
「改めて言われると照れるじゃないか。止めてくれよ」
頬を染めて照れくささを隠す為にグラスの酒を一気に飲み干してから、ポツリとサジータが言った。
「…本当言うとさ」
「ええ」
「かえでさんの事、苦手だって思ってた。煙たいって言うかさ…」
「昔の昴を知ってるから?」
かえでの指摘に頷いて苦笑して肯定の意か肩を竦めて返すサジータ。
「昴は昔の話をしないものね。でも、それはあなたとの今を大切にしてるからだと思うの」
「ああ。最近は何となくそうしてくれているんじゃないかって思い始めたんだ」
微笑んでそう言ったサジータにかえでが問う。
「何かきっかけが?」
「いや、そういう訳じゃないんだけどさ。何となく?そう思ったんだよ。うまく言えなくて悪いね」
「ううん。昴はあなたのそういうところに惹かれているのね、きっと」
かえでのその言葉にサジータが嬉しそうに笑う。
かえでの言葉は何て素直に自分の中に染みていくのだろうと思う。
ただ優しいだけではない、芯のある言葉の様に思えるからだ。
だからこそ、マリアもかえでを離さないのだろうか。
自分が迷った時に指標となる言葉をかえでは持ち合わせているから。
「…かえでさんがこっちに来てくれて良かったよ。でなきゃこんな風に話すことはなかったしさ。アタシはかえでさんが好きだよ!」
照れるなこういうのと笑いながらグラスの酒を一気に飲み干すサジータ。
サジータの言葉は本当に真っ直ぐに響くと思う。
迷いながらでも、自ら見つけた言葉だからなのだろう。
だからこそ、昴もサジータに惹かれて手を取ることを選んだのかもしれない。
白と黒しかない自分の世界に必要な色として。
「ありがとう。私もサジータが好きよ」
そう笑い返してサジータのグラスに酒を注ぐ。
「まだ飲めるよな?」
ニヤと笑ったサジータに首を傾げて応えるかえで。
「ええ」
「そう来ないとな!」
今宵の酒宴はまだ当分続きそうだ─。
「すっかり行きそびれてしまったわね…」
「仕方がないね…」
苦々しい表情でかえでとサジータを見つめるマリアと昴。
「複雑?」
少し何かを考え込んでいる様子の昴にマリアが問う。
「いや…」
ただ一言そう返すとグラスに口をつけて昴は苦笑した。
リクエストは「昴サジ、マリかえ前提でかえでさんとサジータがお酒を酌み交わしマリア達の話をしているお話」でした。
もっと惚気話にしようと思っていたんですが、書き始めたら結構真面目な話になってしまいました(^_^;
何だかんだと真面目な二人です。
欧州星組絡みのこともあるので一度ゆっくり話をさせてみたかったので嬉しい機会でした。
蘭華さま、リクエストありがとうございました!