メルを後ろから抱き締める大神。
ふと鼻先を掠める甘い匂い。
後ろ姿からも窺い知れる照れた表情。
両手で大事そうに抱えたそれの無事にホッとしたように息を吐くと、消え入るような声でメルが言った。
「よろしかったら、その、これ…」
「俺に?」
「はい…。シーに教わってケーキを焼いたんです」
言ってから更に頬を染めているであろうメルに大神の口元が綻ぶ。
「ありがとう、嬉しいよ。…それで、メルくんさえ良かったら一緒に食べない?」
一緒にその箱を持ちながらそう言った大神にメルは嬉しそうにはにかんだ後で小さく頷いた─。