マリかえ。観覧車にて。連作です。

 「…どうされましたか?かえでさん」
 チラと見えた昴たちのゴンドラを見てかえでが頬を染めた。
 昴たちが何をしているかは大方想像出来たけれど、これを利用しない手はないわよね。
 顔を覗き込む様にそう聞くと更に頬を染めて。
 「な、何でもないのよ」
 「そうですか?少し顔が紅いようですが」
 熱を測る様にかえでの額に自分の額をつけてみる。
 「だ、大丈夫よ。心配いらないわ」
 慌てて私から離れようとするかえでの隣に席を移し、腰を抱く。
 「…何を見たんですか?」
 「え?」
 「隣のゴンドラのです」
 顔を近付けてそう問うと、恥ずかしいのか俯いてしまった。
 「言えない様な事なんですね?」
 わざと残念そうに言ってみせると
 「そう言う訳ではないのだけれど…」
 と口篭もって言いにくそうに赤面する。
 その表情が本当に可愛らしくて、いつまででも苛めたくなってしまう。
 「…では、言って下さいますか?」
 弱々しく微笑んで見つめてみると、観念した様に私の肩に顔を埋めてかえでが言った。
 「サジータの…顔が見えて…それで…その…」
 そこまで言って耳まで紅く染めたかえでの額にキスを落とす。
 「…ありがとうございます。あなたがあまりに可愛らしかったので言わせてしまいました」
 「気付いていたの?!」
 かえでからすれば私の言葉は寝耳に水だったのだろう。
 顔を上げて見つめられた。
 「そういう訳ではないのですが、多分そんな事になるだろうと思っていました」
 「そうなの?」
 「はい。昴とロベリアの事ですからね。大体、想像が出来ます」
 かえでの髪を撫でながらそう言うと。
 「もう本当に意地悪ね、あなたは」
 拗ねた様に言ったかえでのその表情に思わず見とれて、抱き寄せる。
 「私たちもどうしましょう?見せつけてみますか?」
 低く囁いて耳朶を甘噛みすると、かえでから小さく甘い声が嬌がる。
 「馬鹿…」
 すっかり赤面した顔で背中に腕を回されたから、本当に敵わないと思ってしまう。
 「…そうですね。馬鹿かもしれませんね。あなたの事ばかり考えてますから」
 そう唇を重ねた。

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