「Candy graffiti2」大神×すみれ (11/12月作成)

*学園サクラです。
大神とすみれが教師と生徒で、恋人同士の設定。
140SSで書いていたネタが元です。


 西陽が差し込んで長い影が伸びる放課後。
 部活動に勤しんでいる生徒たちの賑やかな声が時折響く以外は廊下も閑散としていて昼間の喧噪が嘘であるかの様だ。
 北棟と西棟が渡り廊下で繋がっている広いこの学園の西棟の端に位置し、滅多に人も通らないその奥の教室に大神一郎と神崎すみれは居た。
 一人はこの学園の教師。
 熱血ながらも生徒の目線に合わせた指導で生徒たちの信頼も篤く、密かに彼を慕う生徒も多いとの噂だ。
 もう一人はこの学園の生徒。
 日本有数の財閥の令嬢で才色兼備との誉れも高く、近々社交界にデビューとの噂も立っている。
 その二人が何故にこの様な所に二人で居るか。
 答えは至極明白で、この二人が実は恋人同士だからだ。
 だが、教師と生徒という関係である以上、公には出来ない。
 ましてや、財閥の令嬢相手ともなれば学園内だけの問題では済まないだろう。
 そういう理由もあって、彼らはこの人気の少ない空き教室で放課後にデート気分を味わっていた。
 机を挟んで向かい合わせに座りながら、他愛のない話をする。
 友人たちの前では”お嬢様”でいるすみれも、大神を目の前にすると年相応の一人の”少女”になって。
 そんなすみれを見て微笑む大神も”教師”としてではなく、”恋人”としてすみれと接していた。
 「…そういえば、先生。この噂をご存知?」
 おもむろにそう切り出したすみれに首を傾げる大神。
 「何だい?」
 「”西棟5階の空き教室に幽霊が出た”という噂ですわ」
 神妙な顔ですみれが言って「まさか」と苦笑した後、直ぐに事の真相に気付いて大神が言う。
 「…気を付けているつもりだったんだけどな。いつ見られたんだ…」
 「やはり、私たちの事なのでしょうか?この階には他にも空き教室があるではありませんか」
 「…間違いないだろうね。俺たちの他には此処に出入りしている人間を見た事がないし」
 「そうなると、此処はもう使えなくなってしまいますわね…」
 不安げな表情を見せたすみれの頭を撫で、大神が微笑む。
 「大丈夫だよ、すみれくん」
 「何処か他に人に見つからない場所がありますの?」
 放課後に会えなくなってしまうかもしれないという瀬戸際にすみれに焦りの表情が浮かぶ。
 「頻繁に会うとなると学内では少し難しいかもしれないな」
 冷静にそう言った大神を半ば睨み付ける様にすみれが言う。
 「先生はこの様な時にも冷静なんですのね。私と会う事など他愛のない事と思ってらっしゃるんでしょうね」
 思わず。
 皮肉めいた口調で言ってしまい、ハッと口をつぐむ。
 大神をチラと見ると急に立ち上がって。
 やはり怒らせてしまったのかもしれないと覚悟を決めると、大神に後ろから抱き締められた。
 「!」
 「…不安にさせてしまったね」
 思い掛けないその言葉に恐る恐る大神に問う。
 「…怒って、ませんの?」
 「どうして俺が怒るの?」
 「先程、言い過ぎてしまったので…」
 「そうだったかい?」
 そう笑った大神に、本当に大人だと敵わないとすみれは思う。
 自分はまだまだ子どもで同じ目線にすら立っていないと痛感する。
 「先生は私を甘やかし過ぎですわ…」
 回された大神の腕に自分の手を重ねて、苦笑するすみれ。
 「甘やかし過ぎついでに、はい。これ」
 ジャケットのポケットから鍵を一つ取り出して机の上に置く大神。
 「…これは?」
 「俺の部屋の鍵だよ。今日渡そうと思っていたんだ」
 だから、大神は学内で二人きりで会えなくなるかもしれないと言いつつも落ち着いていたのかと合点がいく。
 それ以上に、大神の部屋の鍵を預かれるかもしれないという事実にすみれの胸が高鳴る。
 「先生のお部屋の鍵…。私がお預かりしてもよろしいのですか?」
 そう問うたすみれの手を取って指先にキスを落とした後、再び椅子に座って自分の膝を指差して。
 その大神の仕草に頬を染めて立ち上がると、そっと大神の膝の上に横向きに座るすみれ。
 「…むしろ、お願いするのは俺の方だよ。俺の部屋の鍵を持っていてくれる?すみれくん」
 すみれの顔を覗き込む様に微笑んでそう言った大神に見とれながら、恥ずかしそうにすみれが頷く。
 「…はい」
 「ありがとう」
 すみれの頬に手を添えて、額に唇を寄せて。
 戯ける様に囁いた。
 「…この続きは俺の部屋でね?」
 一気に朱に染まるすみれの顔。
 「も、もう先生。からかわないで下さいましっ…」
 「はは、ごめん。でも、うちに来たら名前で呼んでね、神崎さん?」
 相変わらず余裕綽々な大神にますます赤面するばかりで、すっかり思うがままになっていると思いながらも反撃の余地などなくて。
 それでも、いつか同じ目線に立てるように努力しようと心に誓いながらすみれは大神の部屋の鍵を手に取り、ぎゅっと握りしめた─。

~あとがき~

大すみで学園パラレルでした。
140SSで書き始めたら、思いの外ハマりましてつい普通尺を(笑)
大すみはすみれさんが乙女なのが良いですよね(*´Д`*)
ちょっと大メルと同じ匂いを感じます。
そんな感じに最近、ちょっと大すみブームきてます。

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