陽も落ちかけた頃、ようやく仕事を終えた大神が職員用玄関に着くと、見慣れたシルエットが其処に一つ。
「…レディを待たせるなんて感心出来ませんわね、先生」
少し緊張した顔ですみれが言う。
恐らく、大神が来たらそう言おうと思っていたのだろう。
「す…神崎さん、今日は車じゃないのかい?」
思わず名前を呼びそうになって苦笑しながら大神が聞く。
「…先に帰らせましたわ」
極まり悪そうに俯くすみれ。
「待っててくれたんだね」
そう微笑んだ大神に嬉しさを滲ませ、すみれが言う。
「たまには歩いて帰るのも悪くないと思っただけですわ」
「うん。でも、ありがとう」
「…一緒に帰りませんか?」