朝。
心地良い微睡みに意識を半分夢の中に委ねていると、少し控えめにカーテンを引く音がして部屋に朝日が差し込む。
そして、頭の上に降ってくる声。
「─おはようございます」
その声にまだぼんやりとした頭で応える。
「─おはよう、マリア」
そう返事をしたもののまだ起き上がる気になれない。
それどころか差し込む光が眩しいのか手で顔を覆う大神。
「もう少しだけ」
そんな大神に呆れ顔でマリアが言った。
「もう隊長ったら」
「眩しくて目を開けられそうにないんだ」
「そうですか?」
大神はそう言うが、冬の朝でまだ外は少し薄暗くてそれほどの光はない。
そう首を傾げたマリアの手を自分の方へ引き寄せる大神。
「!?」
「ああ。君が眩し過ぎてね」
「は?」
唐突な大神の行動に思わず聞き返すマリア。
「マリアが眩し過ぎて、とても目を開けられそうにない」
マリアに囁くようにそう言った後、大神はマリアを更に引き寄せ抱きしめた。
大神の方に倒れ込むように抱きしめられながら顔を紅潮させるマリア。
「隊長っ」
「ん?」
「そんな事を仰って起きられないつもりですね?」
「はは。バレたか」
マリアの半ば照れ隠しの指摘にそう戯けて答える大神。
「やっぱり…」
「でも、君が眩しいのは本当なんだけどなぁ」
「隊長っ」
「からかってはいないよ?」
「知りませんっ」
そうマリアの顔を覗き込んだ大神にマリアはますます顔を紅くして。
そんなマリアを嬉しそうに見つめながら大神が言う。
「─さて、折角マリアが起こしてくれた事だしそろそろ起きるよ」
「そうなさって下さい」
「でも─」
「?」
「もう少しだけこうしたらね。良いかな?」
マリアの手を握りながら、大神が問う。
「駄目と言ったら起きられないつもりですか?」
「そこまで聞き分けが良くないように見えるかい?」
「見えないからお伺いしたんです」
「それは残念だったね。俺は君の事となるとそんなに聞き分けが良くないんだ」
悪びれずにむしろ得意げにそう言った大神にため息を吐くマリア。
これはもう諦めるしかなさそうだ。
「…分かりました。でも、少しだけですよ?」
朝食に遅れてしまいますからと一言付け加えてからマリアはそっと大神の胸に頭を預けた。
「ああ。分かってるよ」
大神はそんなマリアを愛おしそうに抱きしめるとその額にキスを落として返す。
そんなある朝の光景。
つい二人で微睡んでしまって朝食に遅れそうになるのも時間の問題だ─。
title : Fortune Fate君を例える3題「太陽よりも眩しいひかり」