「あの、大神さん」
困惑した表情でメルが言った。
「ん?何だい?」
メルの手をとって指先に口づけながら大神が返す。
「まだ仕事中ですよ…?」
「…さっき、開場作業をしてた時にさ。君のファンだっていう人が居てさ」
「え?わ、私のですか?!奇特な方ですね…」
苦笑したメルを大神が見つめる。
「本当にもう君ときたら」
そうため息を吐いた大神に首を傾げるメル。
「大神、さん?」
「俺はさ、もう本当に俺が一番メル君の魅力を解ってれば良いって思ってたんだよ。でもさ、いざ君のファンって人が現れるとさ、面白くないっていうかさ」
拗ねた様な大神の口調に思わず吹き出すメル。
「ふふっ」
「負けず嫌いなんですね」
「殊更、君の事に関してはね。だから、こんな風に君を独り占め出来るのは俺なんだって思いたいんだよ」
メルの言葉に戯けた様に大神が答える。
「それじゃ、まるで」
「子どもみたいだろう?」
少し得意気にそう言った大神にメルが笑って返す。
「しょうがない大神さんですね」