「…どうだ、ロベリア。こんな風に見下ろされている気分は」
アタシをベッドに押し倒した後、そのまま馬乗りになって勝ち誇った様にグリシーヌが言った。
「…なかなかに悪くないぜ?」
そう笑って返してみせると、鼻で笑って低い声で囁いた。
「…強がりを言う。だが、そなたらしくてなかなかに良い」
不敵に笑ってアタシの唇をなぞるグリシーヌ。
その顔には銀縁の眼鏡が掛けられている。
「…ここまでうまく行くとはね」
そう独り言ちてその思い掛けない成果に浸る。
「…何の事だ?」
アタシの頬を指でなぞりながらグリシーヌが言う。
「何でもない。アンタに襲われると思ってなかったって言ったのさ」
─妙な眼鏡を昴から借りた。
何でも、掛けた奴の征服欲を増加させ少々不敵な性格になる作用があるらしい。
なかなかに面白いブツだ。
だが、アタシが掛けたところで何の面白味もないだろう。
何せアタシははなから征服欲を抑えるなんて事をしていないからだ。
そうなると、試す相手は当然決まってる。
アタシはそれをグリシーヌに掛けた。
その結果が今のこの状態って訳だ。
「…ほぉ。それは何故だ?」
「アンタにそんな度胸はないと思ってたからね」
わざと挑発的にそう言ってやると悔しそうに眉をひそめて。
「この状況でよくその様な事が言えるな」
そして、噛み付く様にアタシの唇を奪った。
いつもより大胆で躊躇もないそのキスに一瞬とびそうになる。
このタイミングで眼鏡を外してやったらどんな顔をするのだろう。
吐息が混じり合う最中で手を伸ばしグリシーヌの眼鏡に手を掛けそっと外すと、グリシーヌの動きが止まった。
少しずつ離れていく唇。
変わる眼差し。
「何だ?もう終わりか?」
そう揶揄すると一気に顔を朱に染めて両手で顔を覆った。
「ああっ、いや、その…っ」
「何だよ?」
「じ、自分でもよく判らないのだが、そなたをそうしたいと強く思えてきて、その」
「で、アタシを押し倒したと」
その言葉に慌ててアタシから降りて頭を抱える。
…やっぱり面白いからもう少し遊ぶとするか。