「コトの真相」100,000打リク ロベグリ(11/08月作成)


 自室のソファでぼんやりとしながら、グリシーヌはこの日何度目になるか判らないため息を吐いた。
 先ほど、偶然見かけてしまった光景が脳裏で繰り返し再生される。
 花火と楽しそうに話すロベリア、ロベリアに自然に笑いかける花火。
 そのどちらも意外で衝撃的で声を掛けるのが躊躇われ、思わず。
 逃げる様にその場を立ち去った。
 これ以上、見たくなかったというのが正解なのかもしれない。
 ロベリアのあんな表情も。
 花火のあんな表情も。
 自分は見た事がないと思う。
 唇を噛みしめ膝の上に乗せた拳を固く握ると、少しの痛みを感じるから夢などではなかったのだろう。
 夢であったなら、夢見が悪かったと一笑に付して終わる事が出来るのに。
 「私は今まで何を見ていたのか…」
 自分と居る時と違う二人の独特の雰囲気は一朝一夕で作られたものではないだろう。
 『二人で自分を見て笑っていたのだろうか』
 考えたくない事ばかりがグリシーヌの頭を過ぎる。
 「何を馬鹿な事を…」
 そう独り言ちたグリシーヌの目から涙が溢れ、拳の上に零れ落ちた。
 同時に窓が開いて風が吹き抜け、ロベリアが窓を飛び越し部屋に降り立った。
 「…今日は帰ってくれ」
 立ち上がる事もせず、グリシーヌが言う。
 「そういう訳にはいかないね」
 一蹴してグリシーヌの前に近付くロベリア。
 「今日はそなたと会いたくないと言っている…!」
 構わず近付いてくるロベリアに鋭い語調で更に言う。
 「だったら、独りで泣いてんなよ」
 負けじと言い返したロベリアの言葉にハッとなって涙を拭う。
 「そなたには関係ない」
 目の前に立ったロベリアから顔を背けるグリシーヌ。
 「関係なくないから、アタシに会いたくないんだろう?」
 図星を指されてほぞを噛むが次に言う言葉が声として出て来ない。
 グリシーヌの頬に手を置くロベリア。
 そんな風に優しく触れるから、勘違いして舞い上がってしまうのだと怒鳴りつけてその手を撥ね除けられたら、こんなにも辛くないのにそれが出来ない。
 ロベリアの手を撥ね除ける事も花火を問い詰める事も、どちらもグリシーヌには出来ないのだろう。
 「…もう私に優しくしないでくれ」
 それが、グリシーヌの今の精一杯の言葉だった。
 「…やっぱり、アタシと花火が話しているのを見たんだな?」
 ロベリアからの思い掛けない言葉に目を見開くグリシーヌ。
 そして、気付かれていたという羞恥心から顔が紅く染まる。
 「アンタが何を勘違いしたのか理由は大方想像がつくけどね。アタシと花火はアンタの考えている様な仲じゃない」
 「…なら…!」
 どうしてあのように楽しそうだったのだと問い詰めたい気持ちでいっぱいなのに言葉として続かない。
 「…アンタの事を話していたからに決まってんだろうが」
 「…それは…」
 どういうことで、それは自分の事を二人で笑っていたと言う事ではないのかと言いかけて口をつぐむ。
 そのグリシーヌの様子に息を一つ吐くと、「花火許せよ」とぽつり呟いてロベリアが言った。
 「アンタは信じられないかもしれないけど、花火とはちょっと前から呑み仲間でね」
 「そんな方便、誰が信じると…」
 「そう言うのが分かってたから言わなかったんだ。後で花火にでも確認してくれ」
 多分、笑ってはぐらかされると思うけどねとはロベリアは言葉にしなかった。
 そして、一拍置くと苦々しい表情で言う。
 「花火にアンタとの事を惚気てるんだよ」
 「は?」
 信じ難い告白に思わず聞き返すグリシーヌ。
 「アンタとこういう事があったとかそういう事をだな。花火に話してる」
 どうやら聞き間違いではなかったらしいという事をロベリアにしては珍しいその苦い表情で理解する。
 理解したところで。
 花火に全て知られていたのだという事実に一気にグリシーヌの体温が上がる。
 「なななななな何をしているのだ!そなたは!」
 恥ずかしさから動揺を隠せないグリシーヌ。
 思わず、立ち上がってロベリアに詰め寄る。
 「花火がアンタの事を一番知ってるって思ったからさ」
 「そそそそれにしてもだな!」
 「それに花火は口が堅い。それはアンタもよく解ってるだろ?」
 そういう問題ではないと言いたいのを抑えてグリシーヌは深呼吸した。
 先ほどまでの杞憂が晴れて、すっかりいつもの表情に戻っている。
 「…しかし、アンタがヤキモチを妬くとはね」
 ロベリアも同様にすっかりいつもの調子に戻ってニヤニヤとグリシーヌを見つめる。
 「そなたが誤解されるような事をするからではないか」
 「ヤキモチは認める訳だ」
 「そ、それはだな」
 目を逸らしたグリシーヌを自分の方に引き寄せて抱き締めるロベリア。
 「…悪かったな。つまらない心配させた」
 その言葉に微笑むとロベリアの胸に頭を預けるグリシーヌ。
 「…もう良い」
 そして、二人はいつものように目を合わせるとキスを交わした─。

 

~あとがき~

リクエストは「花火と密会しているロベリアを発見してしまったグリシーヌ(ロベグリ仕様)」でした。
書いている時に何度かマッキーの「SPY」が頭に回り、かつ口ずさんで居たとかは秘密です(笑)
いくらグリが鈍くてもいつかはこういうことありますよね。
と、いうかロベと花火の関係を勝手にうちのサイト仕様にしてしまったんですが、大丈夫だったのだろうか(゚Д゚;)
公式花火さんをお求めでしたらすみません…。
楽しく書かせて頂きました!

黎さま、リクエストありがとうございました!

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