「まさか、君がこういう事をするとはね」
燕尾服に身を包んだラチェットを物珍しそうに見つめながら昴が言う。
「…私だってそう思ってるわ。でも…」
「サニーサイドとの賭けに負けてしまったという訳か」
頷くラチェット。
「それで、僕はサニーサイドに見せる前の練習台と言う訳か」
「…ごめんなさい」
「それでどうすれば良い?」
白い手袋を着けながらラチェットが昴に問う。
「先ずは傅くと良い」
「…こう?」
そう昴の前に傅いてみせるラチェット。
「ああ。いいね。そして、こうだ。『何か御用はございますか?御主人様』」
「言えるかしら…」
恥ずかしそうに頬を染めるラチェット。
「君も役者だろう?」
昴にそう言われて顔つきを変えるラチェット。
「…何か御用はございますか?御主人様」
そんなラチェットの様子に思わず口角を上げる昴。
「…上出来だ。それならサニーサイドも満足するだろう」
「本当?!ありがとう、昴。あなたにお願いして正解だったわ」
「…礼は後日サニーサイドから貰うとしよう」