夜。
花火の部屋。
ロベリアの盃に酌をする花火。
「…悪いな」
「いいえ」
盃に注がれた日本酒を一気に飲み干すとロベリアが言った。
「やっぱりサケは旨いな」
「お気に召して頂いて嬉しいです」
そう花火が言って。
そして、その後に訪れる一瞬の沈黙が合図。
「…何か気になることでもありましたか?」
珍しく花火の方から切り出して、それにロベリアが問い返す。
「どうしてそう思う?」
「…では、何故ロベリアさんは此方にいらっしゃったのですか?」
更にそう問い返されて、半ば嬉しそうに不敵に笑うとロベリアが言った。
「アンタとサケを飲む為さ。─つまらない話でもしながらね」
「…そうですか」
そう微笑んで返し、先程空になったロベリアの盃に酒を注ぐ花火。
「たまには素直になっても良いと思わないか?」
盃の酒を一口飲んでから唐突に話し始めるロベリア。
「それをご承知でお付き合いなさっているのでしょう?」
至極尤もな花火の言葉に頷く。
「確かにあいつが素直になっちまったら退屈過ぎる」
その後のロベリアの言葉を待つ花火。
「にしたって、頑固というか強情というか…ってアンタが一番解ってるか」
「それがグリシーヌですからね」
自分も盃に口を付けながら花火が言う。
「そうなんだよ」
はぁと溜息を吐くロベリア。
それは恐らく親友である花火の前でのみ見せる姿なのかもしれない。
「ロベリアさんがそこを楽しんで居られるようにお見受け致しますが」
まったく、はっきり言ってくれると思う。
これだから、花火と飲むのが好きなのだ。
「まぁね」
「…甘えていると思いますよ」
唐突にそう切り出した花火に聞き返す。
「ん?」
「グリシーヌがです」
「どうしたんだよ?急に」
「─違いましたか?」
盃を手に笑みを浮かべる花火。
思わず笑いがこみ上げるロベリア。
これだから、油断が出来ない。
「─アンタはそう思うんだろ?じゃあ、当たりだ」
「そうですか」
ロベリアのその言葉にも花火はただそう頷くだけだ。
「まだ足りないんじゃないかと思ってね」
「甘やかし過ぎだというご自覚は?」
そう微笑んだ花火にロベリアが口角を上げて返す。
「…何のことだ?」
「いいえ?」
そう二人で目を合わせて笑う。
今夜も長い酒になりそうだ─。
リクエストは拙作の密談シリーズの3という事でしたので、こちらを書かせて頂きました。
やっぱりこの二人の書きやすさは巴里で1、2を争います(笑)
巴里年長コンビ大好きです。
ポタシウムさま、リクエストありがとうございました!