『─今年はどうしようか』
差し迫るラチェットの誕生日を目前にサニーサイドは考えていた。
今更どんなサプライズだって、驚いては貰えないかもしれない。
「ふむ。どうしたもんかねぇ…」
支配人室のデスクに肘をつき、指でペンを回しながらそう独り言ちるサニーサイド。
「…何が?」
不意に上から声が降って来て、顔を上げると呆れたような表情のラチェット。
「ああ、ラチェット。どうしたんだい?」
「どうしたんだ、じゃないわよ。ちゃんと仕事したらどうなの?」
デスクの上に溜まった書類を見ながらサニーサイドを諫める。
「そうだよねぇ」
気のないサニーサイドの返事にため息を吐く。
そんなラチェットが見えていないのか、サニーサイドが言った。
すっかり、自分の世界に入ってしまっている。
「ああ。ねぇ、ラチェット」
「もう、何よ」
「もうすぐ何があるか知ってる?」
急に呼ばれたと思ったら今度はそんな唐突な質問。
肩を竦めるとラチェットは踵を返した。
「戻るわ」
「分からないのかい?」
「サニー、いい加減にしたらどう?」
ウンザリとした表情でラチェットが言う。
「君の誕生日じゃないか」
予想外の言葉に一瞬止まるラチェット。
「忘れてたのかい?」
ラチェットの様子にハァとため息を吐くサニーサイド。
ため息を吐きたいのはこちらだと思う。
「今は仕事中でしょう?」
「君の誕生日を思うと仕事どころじゃないんだ」
「またそんな事ばかり言って」
サニーサイドのペースに巻き込まれまいと、諫めるようにラチェットが言う。
「オーバーだと思ってる?」
「当たり前でしょう?」
「ラチェット、君はまだ僕を解っていないみたいだね」
「そんな風に仕事をさぼる事が?」
その言葉に。
再び大きくため息を吐くサニーサイド。
サニーサイドは立ち上がるとラチェットの横まで来て、ラチェットを見つめた。
「な、何よ?」
「僕はね、ラチェット。もう本っっ当に君の事が好きでたまらないんだよ。そんな君の誕生日だ。その事以外に何を考えろって言うんだい?」
真剣な顔でそう告白されては敵わない。
頬を染めるラチェット。
「…それでも、勤務中だわ」
そう言うのが精一杯だ。
「解っては貰えない?」
熱い眼差しで見つめられてラチェットは思わず目を逸らした。
目を逸らしたラチェットの顔を覗き込むようにサニーサイドが言う。
「じゃあ、この際聞くけど君は誕生日に僕に何をして貰いたい?」
「サニー、いい加減に、」
ラチェットの言葉を断ち切るように困惑するラチェットの手を取って指先に口づけるサニーサイド。
「いい加減にしたら君は逃げてしまうだろう?」
「………」
「…ラチェット」
そう低く囁かれ、顔が熱くなる。
もう逃げられそうにない。
「…私はあなたが居てくれればいいわ…」
言ってから、恥ずかしさで顔を背けるラチェット。
「それだけでいいの?」
そう確認するように言ったサニーサイドに頷いて俯く。
「今年の誕生日も君のそばに居させて貰えるなんて嬉しいよ」
ラチェットを抱き締めながらそう言って。
「…ありがとう」
そう唇を重ねた。
誕生日前からこれでは当日はどうなってしまうのか。
まだ動悸と熱が収まらない。
ラチェットは当日を思い、複雑な気持ちになったのだった─。
Happy Birthday Ratchet!!
ラチェ誕2011でした。
誕生日当日の話じゃないっていう(^_^;
当日も重要ですが、前後とかを書くのが結構好きです。
そして、サニラチェ!!
私はラチェットを困らせるサニーさんが好きなんだと気付きました(笑)