「お嬢様、ご就寝の準備が整いました」
燕尾服姿で仰々しく礼をするロベリア。
「ああ」
ベッドに座りその姿に見とれるグリシーヌ。
「まさか、独りでお休みになられないとでも?」
そう揶揄するロベリアに赤面しながら返す。
「…そうだと言ったら?」
「それでは、このキスをお嬢様に」
そう指先に口づけた。
指先にそっと触れるだけのキス。
「それだけでは足りぬ」
不服そうにグリシーヌが言う。
「そうですか。それでは、お嬢様はどちらに望まれますか?」
ニヤと笑うロベリア。
「なっ…。それを私に言わせるのか?!」
「執事ですから」
そう言われて意を決したように呟く。
「…唇に」
「お嬢様のお望みのままに」
唇にそっと触れるだけのキスに切なげな表情を浮かべるグリシーヌ。
「お嬢様、どうなさいましたか?」
笑みを浮かべながらロベリアが言う。
「…何でもない」
「そうですか」
これよりも熱いキスをくれなどとグリシーヌが言える訳がないのを解っていて言っているのだ。
「…本当にそなたは意地が悪いな…」