誕生日の朝。
メルは大神のアパートに居た。
たまたま今日が休みで、いつもの休前日のように仕事終わりに一緒に大神のアパートに帰って夜を共に過ごしたからだ。
大神に誕生日を祝って貰うのは何回目になるのだろう。
初めて祝って貰った時の事は今でも鮮明に覚えている。
照れ臭そうにそっと誕生日のプレゼントをくれた大神の事を意識し始めた最初だったからだ。
その次の年の事も覚えている。
二度と会えないかもしれないと思っていた大神が花組と共に巴里に戻って来て、初めて恋人として迎えた誕生日だった。
去年の事も勿論、忘れる訳がない。
帝都に出張していたというのに、自分の誕生日に間に合うように帰って来てくれたのだ。
「結局、私が大神さんとの事を忘れられる訳がないのよね」
隣で安らかな寝息を立てて眠る大神を見つめながら苦笑しながら独り言ちるメル。
それなのに、三年前はどうして諦めようなどと思ったのか。
「あの時はそうするしかないと思ってたんだけどな」
大神と居る事の心地好さとかホッとする感じだとかドキドキする感じだとか。
そういうのをいろいろ知ってしまったから、もう手を離そうとか思えない。
「…ん。…メルくん?」
メルの独り言で起きたのか大神が片目を開ける。
「すみません。起こしてしまいましたか?」
申し訳なさそうにメルが言うと、伸びをして半身を起こした後にメルの頭を撫でて大神が言った。
「そんなことないよ」
そうは言うものの時計を見るとまだ早朝で休日の朝に起きるには早過ぎる時間だ。
「それより、」
そうメルを見つめる大神。
「はい」
「さっき、そうするしかないとか何か言ってたのは?」
「!聞いてらしたんですか?!」
予想外の質問にメルの顔が赤くなる。
「いや、ちゃんと聞いてた訳じゃないよ。微睡んでたら聞こえてきたんだ」
「それは聞こえていたって言いますっ」
恥ずかしさからメルは顔を背けた。
「ごめんごめん。それで?」
「…言わないとダメですか?」
「言いたくない?」
「はい」
頷いてから、大神の方をちらと見るメル。
そんなメルを愛おしそうに見つめた後、大神が言う。
「…俺はメルくんの事を諦めようと思った事はないよ」
「え?」
思い掛けない言葉に驚いた表情でメルが大神を見る。
「何度も言ってると思うけどね」
そう笑った大神に見とれる。
「…ありがとうございます」
「ん?」
「私を諦めないでいてくれた事です」
(だから、こんなにも幸せですとは面と向かっては言えないけれど)
言ってから、更に顔を赤くするメル。
そんなメルを抱き寄せると額にキスを落とす大神。
「どういたしまして。今日になって直ぐにも言ったけど、もう一度言わせて欲しい。…誕生日おめでとう、メルくん」
「ありがとうございます」
嬉しそうに大神の頬にキスで返すメル。
見つめ合って、キスを交わして、笑って、更にキスの嵐。
妙なこそばゆさも、いろいろ知られる恥ずかしさも、時々感じる寂しさも。
全部が愛おしいそんな誕生日の朝。
メル誕でした。
とにかく、ただいちゃいちゃさせようと思って書いていたので満足です(笑
ああ、もう、メル大好きだ!!(*´Д`*)
メルを好き過ぎてメルの事を考えるだけでニマニマするキモさです…orz
メル、お誕生日おめでとう!!