言うまでも無い事だが。
酒の力というものは恐ろしいものである。
スターファイブを迎えてのステージが大成功の内に幕を下ろし、和やかな感じに始まったテアトルの1階客席での打ち上げパーティー。
こういったパーティーも始めは皆で一緒に盛り上がっていても、時間の経過とともにいつの間にかグループが出来上がっていたりする。
そんなグループの内の一つにロベリアとグリシーヌはいた。
「良いか?!つまりはだ!」
「はは。すっかり酔っちまってんなぁ、グリちゃん」
すっかり酔って、熱く語っているグリシーヌを見てサジータが言った。
「誰がコイツに飲ませて良いっつったよ?!それと、グリちゃんは止めろ」
面白くなさそうにロベリアが返す。
「まぁまぁ、堅いこと言うなって!」
自らも機嫌良さそうにテキーラを飲みながら、サジータが笑う。
「…とても弁護士の台詞とは思えないな」
日本酒の入ったグラスを手にしれっと昴が言う。
「どわっ、昴。アンタ、いつから居たんだよ?!」
「先程から居たさ。君が迷惑を掛けていないかと思ってね」
「誰が迷惑を掛けるって?!」
「またピンクの象を見たとか言い始めるんじゃないかと思ったんだが」
「あれは確かに見たんだって!しかも、リカにそっくりな奴を!」
そう力説するサジータに肩を竦めて、グラスに口を付ける昴。
「酷い酒癖だな」
呆れるようにそう言ったロベリアに昴が言った。
「そういう君は少しも進んでいないみたいじゃないか」
昴のその指摘に舌打ちで返すロベリア。
「ちっ。アタシの勝手だろ」
「勿論そうだ」
表情を変えずにそう返す昴に、どうにもやりにくさを感じてロベリアはグラスにブランデーを注いだ。
しかし、間に耐えられずに言う。
「アンタは何でも解っているような口振りだな」
そのロベリアの言葉に大きく頷くサジータ。
「そうなんだよ!コイツはヤなやつなんだよ!」
「ああ、もう。アンタはいいって!話がややこしくなるだろうが」
すっかり酔っ払っているサジータを手で押し退けながらロベリアが言うと、昴が助け船を出した。
「サジータ、ダイアナたちが呼んでいたぞ」
「んあ?そっか。んじゃ、ちょっと行って来るかな!」
それでようやく立ち上がると、サジータはフラフラとダイアナたちの所へ向かって行った。
残されたのはロベリアと昴と酔っ払い気味のグリシーヌ。
何やら妙な取り合わせだ。
「で?」
ブランデーを少し舐めた後、ロベリアが昴に言う。
「何だ。話があるのは君の方じゃないのか?」
相変わらず、しれっとしている昴の態度に眉間に皺を寄せるロベリア。
「アンタは何が言いたいんだって聞いてる」
「僕が君に言いたい事?」
「無い、とは言わせないぜ?」
「やれやれ。僕も買い被られたものだ」
息を一つ吐くと昴は手に持っていたグラスをテーブルの上に置いた。
そして、言う。
「僕は君が思いの外、飲んでいない事を指摘したまでだ。それ以外に干渉するつもりはない」
そう言った昴を見つめるロベリア。
ロベリアの鋭い視線にたじろぐ事なく見つめ返す昴。
そこに割って入るグリシーヌ。
「何だ、二人して。私も仲間に入れぬか!」
思わず、目を合わせて笑うロベリアと昴。
「ふ…。さて、僕はそろそろ行こう。ダイアナたちに迷惑を掛けてしまいそうだ」
立ち上がった昴にロベリアが言う。
「アンタとは一度ゆっくり飲んでみたいもんだ」
「昴は言った、君を退屈させるだけだと思うと。…僕は静かに飲むのが好きだ。それでも良いなら」
そう背中を向けた昴に、了解とばかりにヒラヒラと手を振るロベリア。
昴が立ち去った後、拗ねたようにグリシーヌが言った。
「…随分と仲が良さそうであったではないか」
気が付けば、このテーブルに二人だけだ。
「気の所為だろ?」
「気の所為などではないっ」
そう言うと急に泣き出すグリシーヌ。
「ちょっ、何泣き出してんだよ?!」
「泣いてなどおらんっ」
「ああ、もう」
グリシーヌの頭を自分の肩に埋めさせるように抱き寄せて、頭にポンポンと触れる。
「皆が居るのだぞ?」
涙を零しながらグリシーヌが言った。
「いいんだよ。アンタもアタシも酔っ払ってんだから」
「私は酔っ払ってなどいないっ」
酔っ払っている時ほど、そう言うものだ。
間違いなく酔っ払っているという事だろう。
でなければ、グリシーヌが人前で泣くなどあり得ない。
だが、ロベリアはそこに言及せずに言った。
「じゃあ、アタシが酔っ払ってるんだな」
「そなたが?」
「ああ。いつもの事だろう?」
そうグリシーヌの涙を舌で掬って。
「!」
「酔っ払いのやる事だ。アンタはアタシに絡まれてるだけなんだ」
「何でそんなに優しく言うのだっ」
ロベリアの態度に更に涙を零すグリシーヌ。
「ん?」
「そなたがそんな風に優しいから、涙が止まらないのだっ。この涙を止めてくれっ…」
(こんなに泣き上戸だったか…?否、酔っ払い相手に定石も何もないか…。それにしても、)
「まったく、アンタはこれだから困る。アンタのこんな姿、他のヤツらに見せる訳にはいかないだろう?」
半ば独り言ちるようにそう言って。
「…だから、同じように酔っ払う訳にはいかないんだ」
「ロベリア…?」
不思議そうな顔でロベリアを見るグリシーヌ。
そんなグリシーヌの腕を取って立ち上がるロベリア。
「ど、何処へ行くのだ」
「アタシの部屋」
「皆が探すのではないか?」
「これだけ大騒ぎしてたら、誰が居ようと居まいと関係ない。それに─」
「ん?」
「その涙、止めてやるよ」
まだポロポロと零れている涙を自らの指で拭っているグリシーヌにロベリアが言った。
「出来るのか?」
「ああ」
そう頷いて歩き出すロベリアの後を追うように少し躊躇いがちにグリシーヌも歩き出す。
周りを見回すと、ロベリアの言う通りとても賑やかで皆思い思いに楽しんでいて、抜け出したとしても問題はなさそうだ。
そっと会場を抜け出す二人。
ロベリアがグリシーヌの涙をどう止めるのかは知る由もない─。
リクエストはロベグリで”合同ライブ後の打ち上げネタ”でした。
すみません!!
メンバー選択がサジ姐と昴さんだった所為か煽る事も騒ぐ事も出来ませんでしたorz
何かもっとポ○キーゲーム的なのとか王様ゲーム的なのとか、ねぇ…(;´Д`)
とりあえず、泣き上戸で甘えたがりになるグリが書けたので個人的には満足です(爽
綿あめさま、リクエストありがとうございました!