「わかれ際のキスは軽めに」ロベ×グリ(10/07月作成)

「キスの余韻は」

 
 「一つ、約束をしてくれぬか?」
 コートを羽織り、帰り支度をするロベリアにグリシーヌが言った。
 「知ってるだろう?約束をするのはアタシの信条じゃない」
 グリシーヌの要望を却下するロベリア。
 「─頼む」
 緊迫した表情でロベリアを見つめるグリシーヌ。
 どうやら退く様子のないグリシーヌに、諦めたようにため息を吐いてロベリアが問う。
 「”お願い”とあっちゃ仕方ないね。何だよ?」
 「…ただ触れるだけでは駄目だろうか…」
 呟くようにそう言うグリシーヌ。
 「は?」
 そう聞き返したロベリアに自分の唇を指して。
 「そうでなければ─」
 ロベリアに背を向けて、言葉を続けるグリシーヌ。
 「別れ難いなどと思ってしまう…」
 その言葉で。
 ロベリアはグリシーヌが何を言わんとしているのかようやく理解して。
 不敵に笑って返す。
 「別れ際のキスは軽めに─、とでも?」
 頷くグリシーヌ。
 「アンタは何も解っちゃいない」
 「…何だと?」
 「だってそうだろう?それだけで足りる筈がない。アンタもアタシも」
 「!」
 フンと鼻で笑って、思案顔でグリシーヌを見るロベリア。
 「それでは、ごきげんよう」
 掠め取るようにグリシーヌの唇に一瞬のキスを与えると、身を翻して窓へと向かう。
 「…待て」
 ロベリアを呼び止めるグリシーヌ。
 「はぁい。何デショウ?」
 振り返らずに立ち止まって返事をするロベリア。
 まるで、そうなるのが判っていたかのように口角を上げて。
 そんなロベリアの前まで歩いて、ロベリアの襟を掴んで自分の方に引き寄せるグリシーヌ。
 そして。
 ロベリアの唇を奪う。
 「………ん……っ…」
 吐息が混じり合うまで深く口づけると、グリシーヌは唇を離した。
 「…前言撤回かよ?」
 唇を舐めながら、ロベリアが言って。
 「…うるさい」
 俯き加減に赤面しながらグリシーヌが答える。
 「解っただろう?離れるから、貪るんだろうが」
 そう囁いて、グリシーヌの髪を指で掬ってキスを落とす。
 「次に会う時まで躰が渇いてどうしようもなくする為にね」
 「…渇く前に来い」
 消え入るような声でグリシーヌがそう言って、ロベリアが大袈裟に恭しく礼をする。
 「─女王様の仰せのままに」
 それから。
 いつも通り、窓の向こうの闇へと消えて。
 ロベリアが立ち去ったのを見届けた後、グリシーヌは羞恥心から両手で顔を覆ったのだった。
 別れ際のキスの余韻は当分消えそうにない─。

 

  • title by: Fortune Fateみっつの約束「わかれ際のキスは軽めに」

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