「もうすぐでそなたの誕生日だな。何か欲しいものはあるのか?」
口に出してから、首を傾げるグリシーヌ。
「いや、少し直接的過ぎるだろうか…」
もうすぐでロベリアの誕生日。
折角、プレゼントをあげるなら欲しいと思うものをあげたい。
しかし、どう聞いてよいものか分からない。
先ほどからグリシーヌは部屋で独り、どう切り出すべきか練習していた。
「あらぁ、ダーリン。アタシィ、宝石が欲しいのぉ」
そこに不意に降ってくる甘い声。
「なっ…!」
思い掛けない声に驚き振り返ると、イイものを見たと言わんばかりにニヤニヤしながらロベリアが立っている。
羞恥心から紅くなるグリシーヌの顔。
「いいいいいつから、其処に居たのだ?!」
「少し前」
「それだったら、声を掛ければ良かろう!?」
「一応そう思ったさ。でも、それ以上に面白そうだったからな」
悪びれずにそう言ったロベリアに、苦虫を噛み潰したような顔でグリシーヌが返す。
「悪趣味だ」
「そうでもないぜ?」
そう意味ありげにグリシーヌを見つめるロベリア。
その視線にどうして良いか分からず目を逸らすグリシーヌ。
「…それでどうなのだ?」
「ん?」
「先ほどの話だ。何か言っておったではないか」
「あらぁ、優しいダーリンはアタシのお願い聞いてくれるのぉ?」
茶化すかのようなロベリアの態度には閉口するが、聞かれてしまったことで却って気が楽になったかもしれない。
内心ホッとするグリシーヌ。
「そなたがそれが良いなら構わぬ」
グリシーヌがそう言った途端。
つまらなさそうに舌打ちをしてロベリアが言った。
「…ちっ。何、本気にしてるんだ。馬鹿だからか?」
「は?」
「あんなのジョークに決まってるだろうが」
「なっ…」
呆れたようにそう言ったロベリアに対して、からかわれた事に眉をひそめるグリシーヌ。
「おおっと。斧を出すのは無しだぜ」
殺気を感じたのか先手を打つロベリア。
「手打ちになる自覚はあるようだな」
そんなロベリアを睨み付けるようにグリシーヌが言った。
「まさか。アタシが居なくなったら誰かサンが泣いちゃうだろ?」
「誰のことを言っている」
「さぁね。─ああ、一つだけ教えてやろうか」
「そなたに教えられることなどない」
どこまで人を馬鹿にしたら気が済むのかとグリシーヌの眉間の皺がますます深くなる。
「アタシはね、アンタさえ居てくれれば良いんだ」
唐突に語調を柔らかくしたロベリアに意表を突かれるグリシーヌ。
思わず聞き返す。
「は?」
「さっきの話さ」
「と、突然何なのだ」
「アンタが知りたがってたんだろうが」
「そ、それはそうなのだが。その、」
グリシーヌのその反応に不敵に笑ってロベリアが言った。
「それとも、それは却下か?」
「そういう訳ではないが…」
「ないけど、何だよ?」
「それでは、どうにも味気ないというか素っ気ないというか」
”折角、誕生日なのに”とでも、言いたげなグリシーヌ。
「─アンタが思い違いをしているようだから言っておく」
「思い違い?」
「アタシはアンタにその日は一日中そばに居ろって言ってんだ。─つまりはだ。一日中離してやらないって言ってる」
”その意味、解るだろう?”と低く笑ってロベリアが言った。
それで、ようやく合点がいったのかグリシーヌの顔が一気に朱に染まる。
「そ、それでは他の皆からのそなたへの祝いはどうするのだっ?」
「ああん?んなの、どうにでも出来るだろう?アタシへのプレゼントは一年中受け付けてるんでね」
「皆だって、そなたの為に準備しておるかもしれぬのだぞ?」
皆に申し訳が立たないと言うグリシーヌの言葉を遮るロベリア。
「…なぁ、グリシーヌ。アタシはアンタだけ居れば充分なんだ」
「しかし…」
「ああ、くそっ。じゃあ、あいつらに祝われてやるよ」
どうにも踏ん切りのつかないグリシーヌに苛立ちを隠さずにロベリアが言った。
「本当か?」
「ああ。その代わり、その後は覚悟しろよ?」
「う、うむ」
「ふん。アタシが何を言ってもアンタに拒否権はないからな」
口角を上げてそう言ったロベリアに複雑そうな表情のグリシーヌ。
「な、何をさせる気なのだ?」
「それは当日までの秘密ってね。楽しみにしておきな」
そう楽しそうに笑うとロベリアはグリシーヌの髪を指で掬い取った。
その日が来るのを楽しみだと思うのはいつ以来なのだろうと思いながら─。
遅ればせながら、ロベ誕です。
ここのところ、ロベ花続きだったので久々のロベグリです。
久々なのにちっともエロくなくてすいません…orz
グリが何をさせられるのか妄想自主補完でお願いします!!(笑
ロベリアさん、お誕生日おめでとうございました。