『君と過ごす』
結構な時間、其処にそうしているだろうか。
デートの合間に立ち寄った書店で書棚の前に立ち尽くすマリア。
ある一点を見つめて、真剣な表情をしている。
大神はというと、マリアの後ろでパラパラと戦術指南書を立ち読みしながら、マリアの邪魔にならないように待っていた。
はたと何かに気付いたように時計を見るマリア。
そして、振り返る。
「す、すみません、隊長。こんなに時間が経っていたんですね」
謝るマリアに笑顔で返す大神。
「ああ。いいよ。それで、決まったのかい?」
大神のその問いに申し訳なさそうな表情でマリアが答える。
「それが、まだ決めかねていまして…」
そう言葉を濁すマリア。
「はは。好きなだけ考えると良いよ。時間はたっぷりあるんだしね」
「はい…」
苦笑するマリア。
そんなマリアを見て、大神が呟く。
「…うん、やっぱり好きだな」
「?何ですか?」
独り言ともつかない大神の言葉にマリアが聞き返す。
「いや、俺は君と過ごすこういう時間が好きだと思ってね」
手にしていた本を棚に戻しながら大神が言う。
「例えばこういう風に好きな本を探しに本屋に立ち寄ったり、ちょっとお茶を飲みに喫茶店に立ち寄ったり。そういうの全部にふと平和を感じるんだよ」
「…ああ。本当にそうですね」
大神の言葉に同意するように微笑むマリア。
「その上さ。其処に君が居るのだから、更に幸せでね。本当に好きな時間なんだよ」
そう語る大神の顔は本当に嬉しそうだ。
「隊長…」
「ありがとう、マリア。俺のそばに居てくれて」
「いえ。こちらこそ、ありがとうございます」
頭を下げ合って。
目を合わせて、笑う二人。
「…まぁ、ちょっと此処でする話じゃなかったかな」
苦笑しながらそう言った大神の言葉で周りを見回すと、いつの間にか自分たちは注目の的になっていたようだった。
一気に赤面するマリア。
「…マリア、ごめん。本はまた今度にしよう」
マリアしか聞こえないような小声でそう言うと。
「え?」
大神はマリアの手を取って、一気に店を出た。
「はは。帝劇スタアのスキャンダルかな」
店から少し離れた所で立ち止まると戯けるように言う大神。
「もう。隊長ったら」
「それより、本を買えなかったね。ごめん」
「仕方ないですよ。それに本はいつでも買えますから」
「その時は付き合うよ」
「あら、隊長。それはデートのお誘いですか?」
「もちろん」
「ふふ。考えておきます」
「ああ。頼むよ」
そう笑い合う二人。
「ところで、マリア」
「はい」
「この手はまだこのままで良いかな?」
気が付けば、繋いだままの手を指して大神が言う。
照れ臭そうに頷くマリア。
「そうか。じゃあ、行こう」
手を繋いで歩き出す二人。
そんな二人の休日は笑顔に満ち溢れている。
~あとがき~
マリアの大神さんは青ゲージ100%で行きたいところですが、20%くらい赤ゲージ位で丁度良い気がします(笑
この二人は書く度に、まだ書けるんだと嬉しくなるカプです(*’ ‘*)
イメージが尽きたかと思えば、そうでもないと再確認するというか。
まだ落ち着き切らないでいて欲しいカプです。
title by: Abandon恋人に囁く10のお題「うん、やっぱ好き。」