その背中を懐かしいと思う。
当然のようにその後ろで戦って居た時には無かったその感覚。
守られていた実感は勿論あった。
お互いに誰よりも頼りにしていた。
それほどの想いに値する戦いを幾度となく共に乗り越えて来た。
そこに在るのが当たり前だったから、其処から遠ざかるとは思ってもいなかった。
遠ざかってみて初めて、自分が守られていたんだということを強く思った。
自分が決して独りではなかったということを改めて感じた。
前を歩く大神の背中を見ながら、思わずそんなことを考える。
だが、今がそんな事を考えている事態ではないことを思い出して苦笑するすみれ。
そんなすみれに気付いたのかふと立ち止まる大神。
「…ど、どうかされましたの?中尉」
振り返ると真剣な表情の大神。
「…すみれくん。一つ良いかな?」
不謹慎な事を考えていた事に気付かれたのかと、すみれの表情も引き締まる。
「え、ええ」
「この場にとてもそぐわない事なんだが、どうしても駄目だ。これだけは言わせて欲しい」
そう前置きを付けた後。
「俺はすみれくんとこうしてまた共に戦えている事が嬉しい」
言ってから苦笑する大神に思わず吹き出すすみれ。
「何を仰るかと思いましたら」
「すまない。こんな時に」
面目無さそうに頭を下げる大神。
「いいえ。実は私も同じ事を考えていましたの」
「そうなのかい?」
「ええ。こうして中尉の後ろを歩きながら、その事を喜んでいる私が居りました」
「すみれくん…」
「本当は私たちがこんな風に武器を手にする事など無い方が良いに決まってますのに」
「ああ。本当だな」
すみれの言葉に神妙に頷く大神。
「…それでも、私は中尉とこうして共に戦える事を懐かしいと思ってしまうのですわ」
そう苦笑したすみれを見つめた後、微笑み返して。
「それは俺も同じだ。君が後ろに控えていると思うだけで、とても心強いよ」
「ありがとうございます、中尉」
「でも、早くこんな戦いは終わらせないとね」
「はい。平和な帝都で中尉とお茶を戴いている時が一番幸せですもの」
前を見据えてそう言った大神の言葉に力強く頷くと長刀を握り直すすみれ。
「俺も早く君の煎れてくれるお茶が飲みたいよ」
「ですから、こんな戦いはさっさと終わらせてお茶に参りましょう。中尉」
「ああ。行こう、すみれくん」
目で合図をすると、武器を構え直して前に進む二人。
その先にはいつもの他愛ない日常が待っている事だろう。
~あとがき~
実に13年振りの大神×すみれでした( ̄∇ ̄;
以前、アンケートでリクを戴いたので書いてみました。
すみれさんを書いたのが久し振り過ぎて、ちょっと難しかったです(笑
大神さんと二人の時のすみれさんを思い出すのに苦労しました。
高笑いとか一切なくて、ニセ者っぽくてすみません…orz
まぁ、すみれさんって二人の時はこんな感じかと(苦笑