『たまには、そんな夜も』ロベ×グリ R15(10/01月作成)

一体何がどうしてこうなったかはよく判らないが、一つ言えることは。
『グリシーヌは酔っ払っている』ということだ。
でなけりゃ、自尊心が高くて意地っ張りで弱虫なこいつがアタシの肩に寄り掛かりながら機嫌良さそうにしてる、なんてシチュエーションはあり得ない。
大体、こいつがこんなになるまで呑むってのが珍しい。
アタシだって久しくこんなになるまで呑んでない。
まぁ、そこまで呑む前にこいつが横でごちゃごちゃと『呑み過ぎるのも大概しろ!』だとか煩いから、ほどほどにしちまってるんだけどな。
とにかく。
今日は何故だか立場が逆な訳だ。
「ロベリアっ」
「ああん?どうした?」
酔っ払いに呼ばれて返事をすると、不機嫌そうな顔でグリシーヌが言った。
「暑い!」
そう上着のボタンに手を掛けるグリシーヌ。
おいおい、マジかよ。
こうなってくると、この状況がかなりオイシイように思える。
ただ、ここはアタシの部屋でもないしグリシーヌの部屋でもない。
こいつのこんな姿をその他大勢に晒すなんて、んな勿体ないこと出来るか。
アタシはボタンを外そうと躍起になっているグリシーヌの手を制して言った。
「ほら、出るぞ」
「ん」
アタシはグリシーヌが頷いたのを確認すると、足下がふらついているグリシーヌを支えて店を出た。
煙草と酒の臭いの充満する店にいた所為か外の空気が一層新鮮に感じられる。
これなら、グリシーヌも少しはマシになるだろう。
「あっち。あっちに行くぞ!」
そう運河沿いを指差すグリシーヌ。
「はいはい。分かりましたよ」
ったく、このアタシが酔っ払いの面倒見るなんてな。
でも、独りで放って置くなんて勿体ないことが出来ないんだから仕方ない。
「着きましたよ。女王様」
「あはは。私は女王か」
「ああ」
そう頷くと、グリシーヌは満足げに笑ってアタシの肩にコツンと頭を預けた。
「やっと、そなたと二人きりになれたな」
絶対に素面では聞けないような台詞だ。
アタシは込み上げてくる笑いを抑えながら返す。
「随分、可愛いことを言ってくれるじゃないか」
「んー?私がそなた以外の誰にそんなことを言うというのだ?」
満面の笑み。
何だ。
その凶悪な笑顔。
流石のアタシでも目眩がするぜ。
「それは嬉しいねぇ」
大声で笑いたい衝動を抑え、言う。
「それだけなのか?」
アタシの返事に不服そうなグリシーヌ。
「何だよ?」
「キスは?」
酔っ払っている所為で、目も潤んでいて。
おいおい!
これは反則だろ?!
「欲しいのか?」
「欲しい」
ああ、もう!
負け、負け!
負けてやるよ!
「じゃあ、女王様に従いますか」
「うむ」
そして。
半ば開いたグリシーヌの唇に引き込まれるように唇を合わせると、待ちかねていたようにグリシーヌの舌がアタシの舌を捉えるように絡まる。
「……ん……っ…ふ……っ……」
息継ぐ間さえ惜しむかのようにアタシを求めるそのキス。
それに応えるかのようにその舌先を強く吸うと、グリシーヌの躰が一瞬反応して震える。
ようやく唇を離すと、グリシーヌはアタシの胸に顔を埋めながら満足そうに言った。
「ん…気持ちよかった…」
「それはそれは」
ああ。
楽しくなってきたぜ。
考えてもみろ?
羞恥心の固まりみたいなヤツがこの様なんだぜ?
あれはあれで無理矢理言わせるのがたまらないけど、これはこれで。
「なぁ、そなたは私のことが好きか?」
アタシの顔を覗き込むようにグリシーヌが言う。
何だそれ?
「ああ」
「もっと、ちゃんと言え」
「好きだよ」
「ああ。私もそなたが好きだ」
…おい。
誰だ?目の前にいるこいつは。
あまりに素直過ぎて、本当にグリシーヌなのか疑いたくなってくる。
ま、悪い気はしないけどね。
「それは嬉しいね」
「だから、私のことだけ見てろ」
撃沈。
おいおいおいおい!!
なんつーか、もう。
「私にはそなたしか居らん。…だから、そなたも私だけを見ろ。他の者を見るなんて許さぬ…」
一転して、泣きそうな顔でそう言ったグリシーヌを抱き締める。
「…他のヤツなんて見る訳ないだろ?馬鹿」
言い聞かせるようにグリシーヌの耳元で囁くと、グリシーヌは安心したように微笑むと、アタシの頬にキスをした。
「ああ。約束だぞ?」
ああ、もう!
お前、アタシに何されても文句は言えないからな!?
「安心したら、眠くなってきた。背中を貸せ」
「はぁ?!」
「早く!」
「ったく、ほらよ」
背中を出しグリシーヌを背負うと、直ぐに『スゥー…』っと寝息が聞こえてきた。
全く、これからだってのに大損だぜ…。
「…ロベリア…」
「ああ?」
呼ばれて返事をするが、グリシーヌは何も言わない。
んだよ、寝言かよ。
「…こんな時ばかり、甘えてすまぬな…」
「………」
これだから、酔っ払いの相手なんてするもんじゃない。
この持て余した熱をどうしろってんだ?
アタシのそんな気持ちなんて知らないで気持ち良さそうに背中で寝息を立てるグリシーヌ。
この報酬は高くつくからな。
起きた時には、覚悟してろよ?グリシーヌ。

~あとがき~

たまにはロベがグリに振り回されるの巻。
『グリは酔っ払ったら、やたらベタベタする質なんだよ』という妄想でした。
書いてて興に乗ってきてどうしようかと。
もうちょっと、艶っぽくいきたい感じでしたが、それはまた後日(笑
裏部屋もぼちぼち更新したいですなー。
ああ。ロベグリは良いですね。

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