「うわーん!!聞いて下さいよ、ロベリアさん~~!!」
楽屋に飛び込んで来るなり、ロベリアに抱きつくエリカ。
「何だよ、いきなり鬱陶しいっ」
エリカを引き剥がすロベリア。
「プリン占いによると今日は良い日だって出たのに、悪い事が起きたんですよ!!」
「プリン占い?そのようなものは聞いた事がないぞ」
謎の占いに首を傾げるグリシーヌ。
「最近はそのような占いが流行ってるんですか?」
『私もまだまだ勉強不足です』と花火。
「皆さん、プリン占いをご存知ないんですか?!」
皆の反応に大袈裟に驚くと、エリカは姿勢を正した。
「良いですか?神は仰っています。『今日もプリンが美味しければ、その日は良い事が起きる』と」
沈黙。
「…ねぇ、エリカ。その占いって良い時しかないでしょ」
呆れ顔でコクリコが言う。
「どうして分かったんですか?凄いですね、コクリコ!エリカ、ビックリです!」
「分からない方が不思議だよ」
「へ?」
「それで、どうしたのだ?」
「何がです?」
「何か悪い事が起きたとか」
「ああ、そうそう。そうでした」
『ありがとうございます』と花火に頭を下げるエリカ。
花火も花火で『いえいえ、どういたしまして』と頭を下げる。
最早、本末転倒だ。
「それで、悪い事って何だよ?」
傍観を決め込むと思いきやロベリアが本筋に戻した。
「そう悪い事が起きたんです!エリカ、ショックでした…」
ヨロヨロとその場に座り込んで、俯くエリカ。
「エリカがこのように落ち込む程だ。余程の事なのであろう?」
「そうなんですよ、グリシーヌさん」
『聞いてくれます?!』と立ち上がるエリカ。
「あれは、おやつを買いに行った時の事です」
その下りを聞いただけで、何となく先が読めてイヤな予感がしてくる。
「いつものようにプリンを頼もうと思ったら…なかったんですよ~~~!!」
「そんなことだろうと思った」
コクリコがため息を吐く。
「なら、別の物にすればよかろう」
「何を仰ってるんですかっ。良いですか?グリシーヌさん。神は仰っています。『おやつといえば、プリン。プリンといえば、おやつだ』と」
「まぁ。神様もプリンが好きなんですね」
「花火。話がややこしくなるから」
「おやつにプリンが食べられないなんて、こんなに悪い事はないです~~」
「…馬鹿馬鹿しい。たかが、プリンだろうが」
「ロベリアさんっ!」
ボソと吐き捨てる様なロベリアに凄い剣幕のエリカ。
「な、何だよ」
いつにないエリカの勢いに流石のロベリアも少し押され気味だ。
「今から巴里中のプリンを戴いてきてしまって下さい!!」
「はぁ?!」
何を言い出すかと思ったらついにはそんな事まで言い出す始末。
「プリンの為なら、神様も見逃してくれます。さぁ!」
「シスターの言う事かよ…」
これには、ロベリアも両手を挙げた。
「エリカ。いい加減、あきらめなよ」
ポンポンとエリカの肩を叩くコクリコ。
「プ~リ~ン~…」
ガックリと肩を落とすエリカ。
「やれやれ。どうしたものか」
「どうにかお力になれると良いのですけれど」
落胆するエリカに呆れを通り越して同情するグリシーヌと花火。
「…っち」
小さく舌打ちすると、立ち上がるロベリア。
「ロベリア?!貴様まさか?!」
身構えるグリシーヌ。
「ああん?」
「どこへ行く気だ?!」
「…厨房」
「は?!」
「いつまでも、こんなんじゃウザイだろうが」
ロベリアの意外な返答に肩透かしを喰らった格好のグリシーヌを余所に楽屋を足早に去るロベリア。
そのロベリアの言葉で何かを察したのかコクリコも後を追いかける。
「あ。ボクも手伝うよ!」
三人だけになった楽屋で呆然とするグリシーヌに花火が言う。
「グリシーヌ、私もロベリアさんたちのお手伝いをしてくるわ。あなたはエリカさんを」
「あ、ああ。そうだな」
ようやく事情が飲み込めたらしいグリシーヌが頷く。
「エリカ」
「はい…」
「プリンは私たちで用意する。だから、元気を出せ」
「本当ですか!?」
グリシーヌの言葉でエリカの顔にたちまち輝きが戻って。
「ああ」
「エリカ大感激です~~~!!」
そして、グリシーヌに抱きつくエリカ。
一気にいつものペースだ。
「うむ。やはり、エリカはこうでなくてはな」
グリシーヌからも自然と笑みが零れる。
「エリカ、皆が待っている。私たちも行くとしよう」
「はい!エリカ、皆さんのこと大好きです!!」
笑顔の二人。
厨房はこれから大騒ぎになりそうだ─。
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