「…ラチェット」
ラチェットを自室に呼び出し、深刻そうな顔でサニーサイドが言った。
その様子につられて深刻な顔になるラチェット。
「どうしたの?サニー。緊急事態が発生したの?」
「ああ。緊急事態も緊急事態さ…」
サニーサイドのその言葉に、場に緊迫感が漂う。
「それで、敵は?何か情報は掴めたの?」
緊張した面持ちでサニーサイドを見るラチェット。
ところが。
「はぁ?敵?何を言ってるんだい?」
サニーサイドが場違いな素っ頓狂な声を出してラチェットを見る。
「敵じゃなかったら何なの?」
「だから、君は何を言ってるんだい?」
「だって、あなた緊急事態だって言うからてっきり…」
肩透かしを喰らって不可解そうなラチェット。
「緊急事態は緊急事態さ」
「でも、今違うって言ったじゃない」
「まぁ、とりあえずここに座って」
そう自分の膝の上をポンポンと叩くサニーサイド。
「サニー。勤務中よ」
「上司命令、だよ」
「完全な職権乱用ね」
呆れた表情でラチェットが言った。
「まぁね。あ、でもサジータには言わないでくれよ?」
「あなたの話次第ね」
言われた通り、サニーサイドの膝の上に横に腰掛けて。
「…大河君がさ。一番好きなものは最後に食べるって言うんだ」
ラチェットの腰に手を回しながらサニーが言った。
「それで?」
「僕はさ。好きなものは先に食べるんだよね。後に残してお腹が一杯になってから食べるより、その方が美味しいと思うからさ。だから、大河君に君は勿体ない事をしてるって言ったんだ」
「大河君は何て?」
「最後に楽しみに取って置くから、更に美味しく感じるんだって。そう言われても僕にはどうにもピンと来なくてね」
「それと私を呼び出した事に何の関係が?」
「まぁまぁ。話は最後まで聞いて欲しいな。つまり、僕はこう思った訳だ。我慢すればより嬉しいのか?、と。それで、一日君に触れないで過ごしてみようと」
「呆れた。話がすり替わってるじゃない。それで、今朝からずっとよそよそしかったのね」
「すり替わってなんかいないよ。要は好きなものを我慢出来るか出来ないかだ。僕はね、ラチェット。君に触れないでいるのは無理だ。それに僕はいつだって君に触れる事が出来れば嬉しい」
そうラチェットの手を取って口づけるサニーサイド。
「結論としては、”我慢は体に毒”ってことだ」
「今日ずっとそんな事を考えてたの?」
「まぁ、ね。あ、仕事もしてるよ。少しはね」
「当たり前でしょ」
「でも、今日の仕事はもう終わりにするよ。君とこうしてる為にね」
「仕方のない人ね」
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