※オフィシャル無視でお願いします。
ドンドンと扉を打つような音が聞こえた気がして、大神はベッドから体を起こした。
時計を見ると、2時を回ったばかりで。
道理でまだ暗いはずだと、まだ夢うつつな頭でボンヤリ思っていると再びのその音。
やはり夢ではなかったと確認できたが、こんな時間に一体誰だろうと玄関の扉に向かう。
「…はい。何のご用でしょうか?」
非常識な来客に扉を開けぬまま応対すると、扉の向こうから聞こえてきたのは意外な声。
「良かったー!大神さん、起きてたんですね!」
「エリカくん!?」
思わず扉を勢いよく開けると、ガンッと鈍い音。
同時に頭を押さえてその場にしゃがみ込むエリカ。
「いったぁ…!頭打ったぁ…」
「いいっ?!す、すまない。大丈夫か!エリカくん」
一気に目も覚める衝撃に慌てたのは大神。
しゃがんでいるエリカに手を差し出して起こす。
「もうっ、酷いじゃないですかっ。大神さんっ」
大神からの思わぬ一撃に恨みがましい顔のエリカ。
「本当にすまない。まさか、扉の内側にいるとは思わなくて…」
「もう、本当に気を付けて下さいね」
「ああ」
そう頷いたものの普通は扉の開く方向には立たないだろうなんて事を思った大神だった。
「こんな時間だし立ち話もなんだから、エリカくんさえ良かったら入ってよ。カフェでも煎れるからさ」
時間も時間なだけに女性を部屋に招き入れるのはいかがなものか、なんて事が大神の頭を過ぎらなかった訳ではないが、こんな時間に立ち話をする方が周りに迷惑を掛ける事もあり、何より事故とはいえエリカの頭に出来ているだろうたんこぶのお詫びも兼ねているのだった。
「はーい。エリカ、カフェオレがいいです!あ、お砂糖は多めでお願いしますね」
そのような大神の心中を知るよしもなく、脳天気もとい無邪気に中に入るエリカ。
そんなエリカに苦笑しつつ、カフェを煎れる支度を始める大神だった。
「あったかーい!」
しばらくカップに手を当て暖を取った後、カフェオレに口を付けてエリカが言った。
「それは良かった」
「ふぅ…。何だかホッとしますねぇ…。大神さんがあのまま出て来なかったら、エリカおはようのダンスをするところでしたよー」
笑顔でそう言ったエリカとは対照的に引きつった笑いになる大神。
「は、はは…。本当に良かったよ…。と、ところでエリカくん」
「はい。何ですか?」
すっかりくつろいでいるエリカに大神が問う。
「俺に何の用だったんだい?」
「ああっ。そうでした!エリカ、大神さんにカフェをご馳走になりに来たんじゃないんでした」
大神の指摘に『いけない、いけない』とエリカ。
「ありがとうございます、大神さん。おかげで思い出しました」
「あ、ああ。どういたしまして…」
すっかり本末転倒だ。
「で。何の用だったんだい?」
「へ?ああ、そうですよね。えっとですね、大神さん」
急に真剣な顔になったエリカにつられるように真剣な顔になる大神。
「雪が降ってるんですよ」
「え?雪?」
「そうです」
頷くエリカ。
窓の外を見てみるといつの間に降り始めたのか石畳にうっすらと雪が積もり始めていた。
「本当だ。確かに今日は寒かったもんなぁ…」
「私もさっき気付いたんですよー。それで、これは大神さんに教えてあげないとと思って」
「『思って』、こんな時間にわざわざ来てくれたのかい?」
「はい。こんな時間にわざわざ来ちゃいました!」
得意気にそう言ったエリカに、思わず大神の口元が綻ぶ。
「ありがとう。エリカくん」
「大神さん、巴里の冬って初めてじゃないですか。だから、真っ先に見せたかったんです」
照れ臭いのか指先をモジモジと見つめるエリカ。
「ベランダ、出てみませんか?」
視線を逸らすようにそう言ったエリカに頷く大神。
「ああ。いいね」
ベランダに続くガラス戸を開けると、寒気が一気に部屋に入って来て思わず身震いする。
「わ。結構、積もって来ましたね」
「明日は雪遊びかな?」
「みんなでやりましょうね!」
「ロベリアとグリシーヌは嫌がりそうだけどね」
「大丈夫ですよ!お二人とも優しいから、お願いすればきっと一緒にやってくれます」
「そうだね」
ベランダに並んでそう笑い合う二人。
「ああ。でも本当に綺麗だね」
白くなり始めた街並みを見つめて大神が言った。
「冬の巴里も気に入って貰えましたか?」
「ああ。とてもね」
「良かった」
大神の返事に安心したように笑うエリカ。
エリカなりに大神がいつまた帝都に帰ってしまうのではないかと不安に思っているのかもしれない。
そして、雪はそれを確かめる為の口実だったのしれない。
「…着替えたら、部屋まで送るよ」
「ありがとうございます。…でも、もう少しここにいても良いですか?」
大神に寄り添うエリカ。
「もちろん」
エリカを抱き締める大神。
「…あったかいですね」
「うん」
寒さも雪も恋人たちの前では、寄り添う為の口実に過ぎないのかもしれない。
~あとがき~
時間的にはサクラ4後で。
オフィシャルは無視の方向でお願いします(笑
そうじゃないと、「君ある」が成り立たなくなるので( ̄∇ ̄;
しかし、大神×エリカは6年振りです。
そんな経ったんだ(爆
このお話ははる様に捧げます。
よろしければ貰ってやって下さいませ。