スーパー歌謡ショウ「新編 八犬伝」(2)(初日(8/15)・FC貸切日(8/21)・24日昼・千秋楽(8/25))


15分の休憩の後、ブザーが鳴っていよいよ第二幕の開演です!!
1時間45分と例年以上に重きを置いた今年の第二幕。
休憩あけの二幕開演アナウンスは全公演通してマリアさんでした。

マリア「本日はお暑い中、大帝国劇場にご来場賜り、まことにありがとうございます。
    恐れ入りますが、今一度、蒸気携帯電話などの電源をお切り下さいますよう、
    お願い申し上げます。
    では、これより、曲亭馬琴・原作。金田金四郎・脚色による「新編 八犬伝」を上演いたします。
    最後までごゆっくりご観覧ください。」

昨年に引き続き、原作ありの劇中劇でございます。
昨年もサクラ流でしたが、今年もどんなサクラ流「八犬伝」となっているのでしょうか?!
ちなみに原作を知らないという方は宜しければこちらのサイト様へどうぞ☆
「南総里見八犬伝」を基礎中の基礎から解りやすく解説されてらっしゃいます。

先に申し上げておきますと、「新編 八犬伝」と題して居られますように少し…いえ結構、原作と違います(笑)
では…サクラ版、いわば広井版「八犬伝」をお楽しみ下さい♪

☆二幕 劇中劇『新編 八犬伝』☆
配役(レポ構成の都合上、主要人物のみ先に書かせて頂きます)
・犬坂毛野…真宮寺さくら
・犬山道節…マリア・タチバナ
・犬村角太郎…アイリス
・犬飼現八…李紅蘭
・犬田小文吾…桐島カンナ
・犬塚信乃…ソレッタ・織姫
・犬川荘介…レニ・ミルヒシュトラーセ

・里見義実…米田一基
・金碗大輔…大神一郎
・伏姫…藤枝かえで
・山形定包…団耕助
・赤岩一角…深川の千葉助

・玉梓…東中軒雲国斉

会場照明落ちて、スローテンポな「♪未来の兄弟たちへ」のインストが静かに流れ始めます。
静まる客席。
ベンベンベンッと三味線の音がして、上手より雲国斉さんが登場。
上手袖すぐに演台が。
富士山が絵付けされた名入り(東中軒雲国斉と入っています)の布が掛けられています。
はい、今回も語りは雲国斉さんです。

雲国斉「ほんの些細な約束さえも~~ 切れぬ絆の~因縁か~
    言葉違えて裏切る者は~ 末代までの祟りある~

    これは昔々の物語 房州里見一族に降りかかりましたる奇怪な事件!
    その発端とは!

    愛を持って平和を願う~ それが世のため人のため~
    天下に名高き里見の城に~ 隣国城主攻め込んだ~
    平和条約打ち捨て破り~ 奇襲攻撃だまし討ち~

    そもそもこれは、隣国の城主、影連(かげつら)の愛人であります玉梓(たまづさ)が発案!
    ああ、悔しや…里見の殿様、義実(よしざね)公!
    さて、今すぐ里見の城に影連の軍勢なだれ込もうとした時!
    敵陣深く潜り込んでおりました里見の忠臣、金碗大輔(かなまり だいすけ)が玉梓を捕らえて参りました!」

貸切公演以降、三味線にハーモニカを加えた演奏をされていました。
三味線とハーモニカ。
意外な組み合わせに思えますが、ハーモニカが良い感じに曲を盛り上げてしました(^^)

奈落より、金碗大輔と里見義実(さとみ よしざね)、そして玉梓が上がって来ます。
そして、何と玉梓は人形浄瑠璃です!
玉梓の声は語りとともに雲国斉さんが。
玉梓を囲むように右手に大輔、左手に義実公。
奈落部分が完全に上がって、一歩横に出る二人。
玉梓の進退を主君・義実に問うため、その場に跪く大輔。

玉梓「ああ、お許しくださいませ。
   どうか、ご慈悲を…義実公…!」
手をついて命乞いをする玉梓。
背を向けてそれを聞く義実公。
大輔「ええい、この期に及んで見苦しい!
   …殿!
   この玉梓こそ、安西影連を色香によって惑わし、
   里見を滅ぼそうとした張本人でございまするぞ!!」
玉梓への怒りを露わに義実へ申し出る大輔。

…というか!
大輔かっこいいんです!!!!(≧∇≦)
大神さん、歌謡ショウ6回目にして初のウィッグ着用(和モノなのでかつらですかね(笑))なんですけど、これがまた…vv
佐々木小次郎みたいなイメージでvvv
実は密かに二幕は大輔を見るだけでも価値があると思っていたり(笑)
個人的趣味の問題ですが…( ̄ー ̄)ゞ
さて、では物語に戻ると致しましょう。

玉梓「それは何かの間違いでございます!
   私は無理矢理、影連の側室になった身にございます…!
   どうぞお許し下さい…。
   全ては影連の企てたことでございます。私は何も知りません…。
   どうか…命ばかりは…!」
白を切り、ひたすら義実に赦しを乞う姿勢の玉梓に大輔。
大輔「黙れ!」
だが、義実は玉梓の方を振り向き、持っていた扇で玉梓を指しながら、
義実「この者は所詮女。その色香に惑う、男こそ悪い。」
と、大輔と対照的な態度。
そんな主君に大輔。
大輔「殿!この者は嘘をついております!!」
義実「それでも赦そう。この玉梓を赦そう!」
玉梓を赦免しようと言う義実。
玉梓「ああ…ありがとうございます!!」
義実の寛容な言葉に、玉梓深く頭を下げる。
しかし、玉梓を信じていない大輔は更に義実公に訴えます。
大輔「なりません!殿!この者を赦せば必ずや再び男を惑わし、この里見を狙いますぞ!
   …嘘をつく女に、愛は通じませぬ!
   ……殿!この金碗大輔に、切れとお命じ下さい!殿!」
玉梓「私はか弱い女でございます…。どうぞ、お助けを…。お助けを…!」
義実「…………。」
はっきりしない主君の態度に大輔。
大輔「殿も…この女の色香に惑わされましたか!
   里見を…滅ぼすおつもりですか!?」
義実「……切れ!!」
『里見を滅ぼすつもりか』との大輔の言葉にハッとなって玉梓を斬ることを命ずる義実公。
大輔「はっ…!」
主君の命を受け、立ち上がって刀を抜く大輔。玉梓の首を狙って構えます。
すると、玉梓の美しい顔が一瞬にして恐ろしい形相へと変貌します。
玉梓「うぬ~~!!おのれぇぇ~~~!!!」
一変した義実の態度に怒りを露わに鬼のような形相の玉梓。
大輔「でぇい!!」
それに臆することなく刀を振り下ろした大輔。
切られた玉梓の首が宙に高く飛んでいきます。
舞台は血で染まったかのように赤い照明。
奈落が下がって義実と大輔、退場。
舞台上方に不気味に飛び回る玉梓の首。
玉梓「人の上に立つ者が一度口にした言葉を違えるとは、
   こりゃ如何なものか!何たることか!
   人の言の葉は神仏の根源をもって口に出すべき。
   その言の葉を違えるとは…、愛を説く資格などなし!
   里見は犬じゃ…犬の血族じゃ!!
   わしはこの世の愛を全て呪ってくれるわ!!!」
深い憎しみの言葉と不気味な笑い声を残していく玉梓の怨念。
舞台そのまま暗転して幕が開くと、そこは里見の城内。
外は敵に囲まれ里見方は劣勢の様子。
そこに西村ヤン太郎扮する犬坂政則が。
犬坂「犬飼、大丈夫か?まだ負けたわけではないぞ。」
負傷した仲間を励まして、眼下の戦況を見る犬坂。
しかし、戦況は思わしくない。
だが、何と不思議なことに優勢だった敵陣の旗が崩れていく。
犬坂「おお!これは…何としたことか…!これは…安西影連の軍が総崩れじゃ!!
   はは!殿!殿ー!安西の軍は総崩れでございますぞ!
   我が里見は救われましたぞ!」
犬坂の歓喜の声に、上手より義実、山下定包(やました さだかね)、大輔、伏姫。そして義実つきの家来たちが。
定包「何故じゃ…。あの勢いのあった安西の軍が…。易々と総崩れとは!」
義実「天運が、我が里見に味方したのであろう!」
定包「…は!」
義実「これぞ正に、北斗の神のご加護であるぞ!!」
義実そう言って、おつきの家来に出された椅子に腰掛ける。
(客席から見て)義実の左に定包が控え、右には大輔と伏姫が。
その後ろには犬坂が控えている。
『ワンワンワン!』と犬の鳴き声ととも下手より何かを加えた犬が義実の所へと駆けてくる。
犬は自分が咥えてきたものを義実の下に。
ざわめく一同。
定包、これを確認して、
定包「おぉ…!これは!!何たること!
   敵将、安西影連の首でございまするぞ!!」
義実「おお!八房(やつふさ)、でかした!天晴れ!
   これで里見は救われた!皆の者!この八房は敵将の首を喰い千切って参ったぞ!」
一同「ははっ!」
義実「しかし、敵将ながら犬に首を取られるとは、何とも不憫。犬坂!」
犬坂「は!」
義実「丁重に葬ってやれ。」
義実の命に犬坂は立ち上がり懐から白い布を取り出して、影連の首の前で合掌をして丁重に布へくるむ。
それを持って上手へと退場。。
定包「さすが、殿の愛犬でございますな。」
義実、愛犬八房を撫でながら、
義実「ようやった、八房。
   お前は里見の危機を救った忠義者。さぁ望むことは何でも叶えよう。」
すると、八房。
何を思ったか突然、義実の娘・伏姫へ飛びかかる。
が、咄嗟に伏姫を守ろうとした大輔に阻まれ、他の家来に取り押さえられる。
大輔「何をするか、八房!」
伏姫「無礼であろう、八房!」
家来「この…!」
八房、唸る。
義実「これこれ、八房。おとなしくせい。」
八房をなだめる義実。
それでもおさまらない八房。
取り押さえられながらも唸っている。
義実「!八房…お前……。」
その八房の様子に何かを思い出した様子の義実。
定包「おのれ!この犬畜生!」
おとなしくならない八房に刀を抜いて振り下ろそうとする定包。
それを伏姫が止める。
伏姫「お止めなさい!」
定包「しかし…!」
伏姫「控えよ。殿の愛犬であるぞ!」
定包「…は!」
伏姫の言葉に刀を納め、元の位置へと控える定包。
そして、八房に話し掛ける義実。
義実「八房よ。いかに忠義の者と言ってもお前は所詮、犬畜生。
   確かにわしは影連の首を取って参れば、褒美として我が里見の姫をやるわと言った。」
伏姫「!父上…!そのような約束を致しましたのか!?」
義実「…ああ、した。しかし、それは戯言じゃ!
   我が里見の姫を、犬にくれてやるわけにはいかんのだ!許せよ、八房。」
義実の言葉に、唸りかかる八房。
その言葉に伏姫。
伏姫「いいえ…いいえ!父上!
   戯言とは言えど、武士たる者が一度口にした言の葉を違える事はならないのです!
   言の葉を違えることは…愛を無くすことにございます!
   ……私は、八房と共に参ります。」
伏姫の言葉に顔を上げる大輔。
大輔「なりません、姫君!!」
義実「ならん!ならんぞ!
   人と犬が、夫婦(めおと)になどなれるわけがない!!」
伏姫「夫婦にはなりませぬ。ただ、共に暮らすだけでございます。
   ですが、世間がそれを許しますまい。
   ですから、どこかに隠れ住みます…どうか、お探しになりませぬよう。
   ……八房をお放しなさい。」
八房を取り押さえていた家来が、義実を見る。
義実、悲痛な表情で頷く。
ようやく自由となった八房は、伏姫の元へ。
八房を撫でながら伏姫。
伏姫「かわいそうな事をしましたね。…さぁ、八房。」
八房と並んで、住み慣れた里見の城を後にするべく歩き出したその時、
大輔「姫様…!」
伏姫の手を掴む大輔。
伏姫「!……離せ、大輔!
   お前も解っておろう?!言の葉を違える事は、愛をなくす事ぞ!
   それこそは、我が里見の恥であろう!!」
大輔に、というよりも自らにに言い聞かせるような伏姫。
伏姫の決意に義実公。
義実「…伏姫。これへ。」
伏姫「…はい。」
改めて義実の前に控える伏姫。
義実、自らの懐に差してあった短剣を伏姫に差し出す。
義実「我が家の宝、村雨丸をそなたに授ける。
   これは愛を守る者が持つ宝剣。今は、そなたにこそ相応しい。」
伏姫「…はい。」
義実公より短剣を受け取る伏姫。
受け取ったばかりの短剣を懐に差し、意を決したように立ち上がる。
伏姫「…八房!」
伏姫の声に八房、その足元へ。
伏姫「…参ろうぞ。」
涙を堪えているかのような表情の伏姫。
八房を従え、別れを惜しむかのようにゆっくりとした歩調で城を後にしようとする。
悲痛な表情でそれを見送る一同。
発つ直前、後ろを振り返る伏姫。
大輔と目が合います。
引き止めんとばかりに顔を上げる大輔。
が、伏姫すぐに前を向くと、その大輔から逃げるように城を去っていってしまう。
悲痛な表情で顔を伏せる大輔。
ガックリと肩を落とし、力無く腰掛ける義実公。
義実「…思えばあの子は、夏の盛りの三伏で生まれたので伏姫と名付けたのだ。
   その事が、不運であったのだ…。犬に従う運命を暗示していたとは…。
   我が手で大きゅうした子を、犬にくれてやらねばならぬとは…!
   定包…わしはもう、死んでしまいたい…!!」
すっかり意気消沈の義実。
その義実を励ます定包。
定包「殿…!しっかりなさいませ!!
   殿は…この里見の…、要にございまするぞ!!」
義実「…定包。一度口にした言の葉の、何と重き事よのう…。」
落胆し、そう呟く義実。
そこに突然、大きな落雷音。
舞台照明は再び赤系に。
妖しげな雰囲気。
そして、宙に浮かぶ玉梓の首。
玉梓「今より妾(わらわ)は、里見の家臣山下定包に乗り移り、里見を滅ぼし、
   この世の愛を全て呪ってくれるわ!!」
そう言い放ち、姿を消す玉梓の首。
大きなな落雷音とともに、家来がばたばたと倒れていく。
そして、苦しむ定包。
定包「うわぁあぁぁぁぁ!!!殿ーーー!!!」
義実「定包!」
大輔「定包様!!」
定包「…だ、大輔!と、殿をーーー…!!」
苦しみながらも自己を保つ定包。
更に、一際大きい落雷音。
定包「うがあああぁーーーー…!!
   心が…心が…バラバラになっていく…!!俺は誰だーーー…?!!!」
入り込んでくる玉梓と自身の精神との狭間で頭を抱えながら苦しむ定包。
義実「定包!心を強く持て!!
   お前はわしの支えじゃ!定包!!」
定包「…うるさーいっっ…!!」
混乱している定包は主君義実の言葉でさえ煩わしく感じるかのように振り払う。
定包「があああああぁぁぁぁ…!!」
最早、誰の叫びも届かない定包は苦しみながら倒れる。
義実「…おのれ、玉梓が怨霊!」
玉梓「はははははは…!
   憎き義実!お前が心を寄せる者の夢や希望はみな打ち砕いてくれる!!」
義実「ええい!そんな事はさせんぞ!!」
そう強がる義実であったが、玉梓の強大な妖力では為す術もない。
大輔も玉梓の妖力によって苦しめられている。
立っているのがやっとといった感じ。
義実「ぐっ…!うわぁ…ああ……っ……!!」
心臓を押さえながら力無い足取りで、舞台前方奈落部分上部へ。
玉梓「地獄に落ちろ、義実!光無き暗黒の世界を…。
   そして、さ迷え。…永遠に苦しみの中をさ迷うがよい!!
   死ね!!義実ーーー!!!!」
衰弱しつつある義実に玉梓のとどめの一撃。
義実「!ああっ、ああ…!ぐあぁぁぁ!!」
苦しみもがく義実。
何とか玉梓の力を振り切って義実の元へ駆け寄る大輔。
大輔「…殿!!」
義実「…だ、大輔!姫を…、伏姫を頼む…!!
   …ぐっ………ぐあああああぁぁぁ!!!!」
大輔「殿!殿!!……殿ぉーーー!!!!」
苦しみながら大輔に最期の言葉を残す義実。
義実を支え叫ぶ大輔。
奈落に沈んで二人退場。
舞台に響く玉梓の勝ち誇ったような笑い声。
玉梓「はははははは…!!」
大輔たちと入れ替わるように奈落から玉梓に精神を乗っ取られ悪の化身となった定包が登場。
ここで玉梓の笑い声と定包の笑い声が重なります。
定包「はははははは…!!
   里見義実は死んだ!今より、里見の城はこの山下定包が支配致す!
   金碗大輔は捕らえて打ち首!伏姫を探し出し、その命を取れ!
   里見の血族を、根絶やしに致せ!!」
白い幕が下りて舞台は前方のみ。照明は赤。BGMは「♪悪の華」インスト。
上手より城の異変を感じて走ってくる犬坂。
犬坂「殿ーーーーー!!殿!?殿!!
   (すっかり変貌した定包を見て)!…貴様!!おのれ不忠義者!裏切り者!
   この犬坂政則、殿に代わって成敗致す!覚悟!!山下定包!!」
刀を抜き、定包に切りかかる犬坂。
が、妖力の前に、刀は意味を為さない。
犬坂「ぐっ……!はっ…!!」
定包「ははははは!…はぁ!!」
落雷音とともに強い妖力が犬坂を襲う。
犬坂「が…!」
妖力によって動きを制された犬坂。
定包「馬鹿め…。(小馬鹿にしたように笑って)犬坂?……。」
そう笑って身動きが取れない犬坂の腹に刀を突き刺す。
犬坂「ぐ…っ!」
上から振り下ろされた刀に切られ、犬坂は倒れる。
犬坂「ぐあぁああ!!」
定包を睨み付けてから事切れる犬坂。
定包「くくっ…ははははは!!あーっはははははは!!!」
犬坂の骸を前にして、勝ち誇ったかのように高笑いの定包。
舞台はそのまま暗転。

奈落より伏姫。
傍らには、八房が寝ています。
舞台上手には北斗神社と書かれた小さな社。
背景には山々、そして星空。

♪伏姫祈願

照明も舞台全体は夜の感じで青とか緑系。
スポットは白を基調にキラキラと神秘的な感じで。
振りは日舞テイストな感じです。
かえでさん、お綺麗でした(*’ ‘*)

伏姫「(八房を撫でながら)この富山(とみさん)の洞窟に隠れ住んで、早八月(やつつき)…。」
そこへ下手より、菊ちゃん扮する宮司が登場。
宮司「…姫様。」
伏姫「おお…。宮司殿!」
宮司「ご機嫌は如何でしょう?」
伏姫「このところ毎晩、不思議な夢を見るのです。
   北斗の神によって、私の心がバラバラにされ、輝く星々となって天空に散るのです。」
宮司「その夢は、吉兆にございましょう。きっと、良い事がございます。
   …さて、今日は鯉を持って参りました。
   鯉釣りの名人、文吾兵衛が姫様の為に釣り上げた鯉でございます。
   鯉の生き血を召し上がって、お元気になって下さいませ。」
宮司そう言って、鯉を差し出しますが、伏姫は微笑んで断わります。
伏姫「魚偏に里と書く鯉は、我が家の宝。口には出来ませぬ。」
宮司「ですが、あなた様も里見の大事な宝。
   里見の鯉を食べ、寿命を延ばすことが、里見の為となりましょう。
   …文吾兵衛も、姫様のお身体を案じておりました。」
伏姫「鯉は…、八房にやって下さい。」
宮司「しかし…!」
伏姫「どうか…。」
宮司「八房…。」
伏姫の願いを聞き、八房の前へ鯉を置く宮司。
八房は、目の前に置かれた鯉を食べ始める。
伏姫「ところで…父上は、お元気ですか?」
懐かしそうな表情で義実の安否を尋ねる伏姫。
宮司「…はい。ご健勝でございます。」
伏姫「里見の者は、皆健やかに暮らしておりますか?」
宮司「…はい。」
伏姫「良かった…。」
定包の謀反を知らない伏姫は、宮司の言葉に素直に喜ぶ。
宮司、そんな伏姫に居たたまれなくなったのかそそくさと立ち上がる。
宮司「では、これにて…。」
去ろうする宮司を呼び止める伏姫。
伏姫「宮司殿、八房は良い子にしていると父上にお伝えください。」
宮司「…わかりました。必ず、お伝え致します…。」
そう一礼して歩き出した宮司を、伏姫またも止めて、
伏姫「宮司殿…!…大輔は…金碗大輔は、いかが…?」
家臣を気遣う以上の感情を隠し切れない表情の伏姫。
これ以上は何も言えないと思ったか、宮司は、
宮司「…ごめんくださいまし。」
そう改めて伏姫に一礼し来た方向へ去って行く。
宮司も去り、八房と二人静かになった洞窟。
伏姫「ああ、大輔…。我が心はそなたを……。」
愛おしそうに大輔の名を呼ぶ伏姫。
そこに、上手の社の影より追っ手の兵士が…。
兵士「!?む…!あれは伏姫!!」
伏姫の姿を確認し銃を構える兵士。
その気配を感じた八房が突然吼え始める。
伏姫は兵士に気付いていない様子。
伏姫「八房!?いかがした?!」
伏せ姫を狙って放たれる銃弾。
咄嗟に伏姫を庇い銃弾を受け倒れる八房。
伏姫「八房っ!!」
兵士、二発目を構えたところで、伏姫を捜していた大輔が。
大輔「おのれ…!!」
兵士の銃を払おうとするが、一歩違いで銃弾は伏姫に当たってしまう。
伏姫「…あっ!!」
倒れる伏姫。
大輔「…貴様っ!でぃやっ!」
兵士「ぐあっ…!!」
銃を退け、兵士を切り捨てた後、伏姫に駆け寄る大輔。
八房とともに奈落部分に倒れている伏姫。
BGMは「♪伏姫祈願」インスト。
大輔「姫様!!」
伏姫を抱き起こす大輔。
大輔「姫様!」
伏姫「…大輔…!八房…、八房は…?!」
自分を庇って撃たれた八房の生死を確かめようと、手で八房を探る伏姫。
その伏姫の手を大輔が八房の骸へ導く。
伏姫「おお…!!可哀相に……。」
自分を庇っての八房の死を嘆く伏姫。
自らも死に際で大輔への想いを伝えようとします。
伏姫「私は…、私は八房と暮らしましたが、この身は潔白です…!」
大輔「解っています!伏姫様!」
大輔のその言葉に安心したのか、笑顔を見せる伏姫。
伏姫「…良かった…。…これで、人の女として死ねます…。
   大輔…。そなたの腕の中でこの世の終わりを迎える事が出来たのが、何より……。」
そう言い残して伏姫の手から力が抜ける。
大輔「…伏姫様!!……っ…。」
伏姫を強く抱きしめ、嘆く大輔。
伏姫の骸を静かに横たわらせ、自分が愛する者の為に何も出来なかったと悔やむ。
大輔「私は…!何と不甲斐ない…っ。
   …犬畜生の八房でさえ、愛する者の為に命を落としたというのに…!私はっ……!!」
そう嘆く大輔。
ふと、伏姫の懐に差してある村雨丸が目に入る。
大輔、村雨丸を手に取り、掲げて、
大輔「そうだ…!もう、この世に生きている甲斐が無い…!
   せめて、あの世で…あなた様のお供を!!」
村雨丸を抜き、自らの首に当てる。
大輔「…いざ!!…伏姫様ーーーー!!!」
刀に力を入れ、自らの喉をかき切る大輔。
舞台はその大輔の血で染まるかのように赤く照らされ、奈落が沈んでいく。
奈落が完全に沈んだところで舞台暗転。
上手より雲国斉さん登場。

雲国斉「海が良し~ 月にまた良し~ 花が良し~
    四季の風情の里見の国 そんな平和なこの国に降って湧いたる災難不幸~

    父の約束守った姫は~ 犬と暮らして愛を断つ~
    しかし悲しや伏姫の愛~ 想う男に届いて消えた
    この世で叶わぬ愛とても せめてあの世で 契りあう~

    今、伏姫の後を追い、大輔、見事喉かき切りますと、
    伏姫と大輔の血が混じりあい、これは不思議、摩訶不思議!
    伏姫の胎内から光り輝く八つの珠が飛び出した!」
舞台の奈落部分より、光る八つの珠が浮いてます。
雲国斉「仁、義、礼、智、忠、信、孝、悌!
    この八つの珠こそ、伏姫と大輔の愛の結晶でありましょう。
    これが世に名高き、里見八犬士の誕生でございます!!」
雲国斉さんの語りが終わると、音楽とともに舞台の白い幕に
「それから二十四年の歳月が経った…」
とテロップが映し出されます。

そして、チョンチョンチョンチョンッ!と拍子木の音。
白い幕が一瞬にして落ちますと、そこは『芳流閣』という楼閣の屋根の上。
その上に二人の人物。
一方は縄を持ち、もう一方を捕らえようと、もう一方はそれをかわしている様子。
拍子木の音が鳴り止みますと、止まっていた二人が動き出します。
現八「犬塚信乃(いぬづか しの)!
   そなたが将軍家に献上した、(短剣を掲げながら)この短剣「村雨丸」は真っ赤な偽物!
   お上に存念あるは明らかなり!神妙に致せい!」
現八がそう縄に力をいれると、信乃も力を入れてそれに抵抗する姿勢。
信乃「これは何かの間違い!村雨丸は我が家の宝!
   将軍家にお願いあって献上した物です!」
現八「ええい!問答無用!
   この犬飼現八(いぬかい げんぱち)が召し捕ってくれる!ふっ!」
信乃「くっ!」
そこに現八の部下が捕り物用の長い棒を持って信乃の方に構える。
部下たち「御用!」
信乃「私の言葉を信じて下さい!現八殿!」
現八「嘘などいくらでもつける。言葉など信じられるものか!
   (腰に差していた十手を信乃に向けて)者ども!!そぉれ!!」
現八の声で三人の者が屋根の後ろの方から信乃を取り囲むように登場。
部下「おお!!」
バタバタと拍子木の音。
(歌舞伎用語では”ツケ”というらしいです。拍子木どうしを鳴らすのではなく拍子木で床を叩いて音を出す方法。主に見栄や立ち回りの場面で使われます。)
そして、太鼓と銅鑼の音。
信乃、縄を振り払うと、取り囲んだ現八の部下を見据え自らも刀を抜く。
信乃「降りかかる火の粉は……振り払うまで!!」
拍子木の音とともに、屋根部分がせり上がります。
屋根部分、完全に上がって地上1階ほどの高さに。(もうちょっとあったような気も…。)
何とその高いところでの立ち回り!
次々と部下を散らす信乃。
信乃「はっ!」
部下「がぁ!!」
ドンっと持っていた棒で一回屋根を叩いて、部下たち退却。
信乃と現八の対決に。
二人とも屋根の端すれすれの所に立ってましたよ。凄い…。
睨み合う二人。
双方同時に動いて『カキーン』と、信乃の刀と現八の十手がぶつかり合う音が。
実力は互角らしく、双方譲らない。
均衡は崩れないまま、背中合わせになる二人。
と、同時に何か異変に気付いてハッとなる信乃と現八。
二人同時に懐から珠を取り出す。
信乃「おお…!」
現八「珠が光った…?!」
同時に離れ、お互いの顔を見合う。
信乃「何だこの輝きは…!!」
現八「まさか…おまえは我が兄弟…?!」
信乃「そうなのか…?我らは兄弟であったか!!」
頷き合う二人。
その動きが止まって、奈落から一人の修験者が登場。
二人と同じように光る珠を手に持っている。
道節「(光る珠を掲げながら)…ここに珠がある!
    不思議な珠だ。
    八つの珠が集まりしとき、この国に愛が満ち溢れると言われている。
    …果たしてどうか!」
連続して鳴る太鼓と銅鑼の音。
信乃と現八が屋根の上に居るまま『芳流閣』の扉が開き、中から他の犬士たちが現れる。
それぞれの手にはそれぞれの光る珠。
ジャンッと銅鑼の音に合わせて見栄を切ると、幕が降りてきて、奈落部分にいる修験者のみが舞台に。
手にしていた錫杖でドンっと舞台を打つ修験者。
道節「我が名は犬山道節(いぬやま どうせつ)!
   俗世間から隠れ、霊山富士に住む修験者だ。
   (ドンっと錫杖を一回突いて)北斗の神に帰依した伏姫の死後、八つの年を三回(みまわ)り、
   十二の星回りを二回りした、二十四の年。
   そのとき珠が兄弟を捜し求めて輝くと言い伝えられている。
   そして今、我が分身ともいえるこの珠が(珠を掲げて)…輝いた!!」
道節、見栄を切ると、奈落が下がりそのまま退場。

舞台暗転して、幕は下りたまま場面転換。
下手より親方扮する飴屋が辺りを見回しながら登場。
上手から来た飛脚とすれ違いざまにぶつかってしまいます。
飛脚「バカヤロウ!どこ見て歩いてんだ!!」
飴屋「ああ、どうもすみません…」
急ぎ足の飛脚はさっさと行ってしまい、飴屋は何やら辺りを見回しながらゆっくりと進む。
舞台中央付近まで来たところで山沢のりさん扮する旅姿の女性とすれ違う。
旅人「…ちょいと、おまえさん。」
飴屋「へい、何でしょう?」
旅人「これからどちらに?」
飴屋「へい、これからちょっと商売で浅草の方に。」
旅人「そう。お気をつけて…。」
「どうも。」と会釈をして互いに歩き始めようとしたとき、ハッと何かを思い出した女性が振り返って言います。
旅人「ああ、浅草から下って、千葉の里見の領地に、入っちゃいけませんよ。」
飴屋「へい、そりゃまたどういう訳で?」
その女性が説明を始めたところで、また別の男の旅人が下手より登場。
二人の間を通り過ぎようとしたところ、その話の内容が気になって一緒になって聞いてます。
旅人「里見の領主…、山下定包ってんだけど、これが大層な悪人なんだよう。
   もう、あらゆる物に税金をかけるのさ。
   (指折り数えながら)通行税、滞在税、水、食料、着物…。
   でさ、それをみんなの為に役立てようっていうんなら解るんだけど…。」
飴屋「違うんですかい?」
旅人「全部自分の懐にいれちまってるのさ。」
飴屋「へぇ…。」
男「そりゃまたえれぇ悪党だな!」
飴屋「しかし、山下定包様といえば、関東御支配役の筈では…。」
旅人「だから、それも賄賂でもって関東御支配役の座に就いたのさ。」
男「とんでもねぇ野郎だ!!」
旅人「はぁ~~…、今じゃやりたい放題。逆らった奴はみんな打ち首獄門だよぉ。
   …それじゃ、あんたたちも気をつけなよ。」
女性の忠告に素直に頷く二人。
女性、最後に振り返って。
旅人「ここで、本日の格言。『触らぬ神に祟りなし』…では。」
そう言い残して下手へと退場。
飴屋「ところで、あなたは…?」
男「ああ、あっしは軽業師をやってるんですよ。ほら!」
と、見事なバク転を披露する軽業師。
飴屋「ああ、ではご同業の方ですね。」
軽業師「そういうあんたは…めあ?」
と、旅人が首から下げている箱に大きく書かれている文字を逆に読む軽業師。
飴屋「違いますよ。これはね、(指で文字を指しながら)あ・め!飴屋でございますよ。」
軽業師「おお、そうか。」
飴屋「ところで、これからどちらへ?」
軽業師「ああ、江戸に入って浅草の方へ行こうと思ってな。」
飴屋「あ、それじゃあどうです?江戸までご一緒に…。」
軽業師「ご一緒しましょう!」
飴屋「いやいや、しかしなんですな~。」
軽業師「なんですね~。」
飴屋「なんですよ~。」
とか話しながら二人で上手へ退場。

はい、ではここでようやく二幕アドリブです。
<貸切日>
『触らぬ神に~』と格言を言ったところで会場から「のりさん!」とか山沢さんコールが。
すると、山沢さん満足そうに、
「決まった…。」
と、笑って下手へ退場。

逆に飴屋と軽業師。
上手へと退場する際、
飴屋「しかし、我々には掛け声がありませんでしたな~。」
軽業師「ですな~。」
すみません…(笑)
普通に見入ってしまいました(^_^;)

<千秋楽>
旅人「ああ、それから今日の格言だけど、今日の格言は『千秋楽』。
   どうして『千秋楽』っていうか知ってるかい?」
飴屋「いいえ?」
旅人「じゃあ、教えよう。これは…昔、お寺の行事で演奏されていた雅楽。雅の音楽ね。
   雅楽の別名が楽。
   それの最後に演奏された曲だから芝居や出し物の最終日を千秋楽って
   言うようになったのさ。」
飴屋・軽業師「(感心した様子で)ほぉ~~~。」
旅人「じゃ、あばよ!」
と、かっこよく下手へと退場する山沢さんでした(笑)
ちなみに軽業師のお兄ちゃんもバク宙を2回して下さいました☆

では、本編へ。
舞台、更に明るくなって幕が上がります。
舞台は賑やかな様子の江戸の隅田堤。
桜も満開で春爛漫といった感じ。
紅白幕も張られ、お囃子も聞こえて、祭りで賑わうこの場所に、上手より三人の犬士が登場。
小文吾「うわぁ!祭だ!祭だ!おおっと、団子屋だ!
    お~い!荘介!角太郎!」
その賑やかな様子に嬉しそうな小文吾。
小文吾と対照的に、真面目な表情で壮介と角太郎。
壮介「何か予感がするのか?この辺りに兄弟がいるという。」
角太郎「判るよ…!」
小文吾「そっかぁ?
    おいらにゃ判んねぇな。それより団子だ!団子だ!」
兄弟捜しそっちのけでさっさと団子屋へ入って行ってしまう小文吾。
角太郎「あ、もう…!」
そこへ、太鼓の音と共に着流し姿の琴音さん扮する親分が登場。
松五郎「お集まりの皆々様方、本日は隅田川桜祭りに、ようこそおいでくださいやした!
     あっしは、この辺りを仕切っている関東松五郎と申しやす。
     以後、お見知りおきのほど。」
膝を曲げ、「お控ぇなすって!」といった感じで中腰状態で礼。
松五郎「今日は、この隅田川桜祭りを盛り上げる為に
    かの有名な旅芸人、旦開野(あさけの)さんをお招き致しました!」
「おお!あの旦開野を?!」と喜ぶ人々。
壮介と角太郎も「良いところに居合わせた」と、嬉しそうに顔を見合わせます。
松五郎「それでは、早速、旦開野さんに登場して頂きやしょう。
    旦開野さん、…どうぞ!!」
太鼓の音に迎えられ、桜の木の前にあった紅白幕が開いて、その後ろから旦開野が登場。
松五郎に導かれされ舞台中央へ。
松五郎「では、景気づけに旦開野さんに一曲歌って頂きやしょう。
    歌はご存知!『♪隅田川』!」

♪隅田川

旦開野「皆様、盛り上がっていきましょう!ご唱和下さい!」(千秋楽)
手拍子を促しながら舞台の中央突出部分で歌い踊る旦開野。
間奏では見事な太鼓の連打も披露。
舞台の中央奥には大太鼓。その手前には普通の大きさの太鼓が。
太鼓は松五郎と子分たち(西ヤン、武田さん、大神さん)、そして荘介と角太郎が交替で叩いてたりしました。
荘介と角太郎はこの太鼓を叩いている時以外は手持ちの小さい太鼓を叩きながら踊りの輪の中に。
そして、親方扮する飴屋が鉦(かね)を鳴らします。
小文吾は団子を食べながら手拍子したり踊ったり。
曲が終わると、旦開野に盛大な拍手。
松五郎「ああ、流石は旦開野さんだ!旦開野さんに、もう一度大きな拍手を!!」
松五郎の声で、一度収まった拍手がまたも鳴り響く。
小文吾「いやいやいやいや~!
    江戸の祭りはいいねぇ!華やかでいい!」
感激して団子屋から出て来る小文吾。
壮介「こんな所で浮かれている場合ではないぞ。」
小文吾「でも、まだ団子食いたいんだよ、おいらは。」
角太郎「しょうがないなぁ。」
荘介「行くぞ、角太郎。小文吾はそこで待っていろ。」
小文吾「あいよ!」
騒いでいたのも束の間。
急に真面目になる荘介(笑)
角太郎を連れて下手へ。
それを団子屋の前で見送る小文吾。
ここで団子屋の半分を覆っていた簾が外され、上手側に座っていた修験者が見えるようになります。
踊り終えて退こうとする旦開野を呼び止める小文吾。
小文吾「ああ!ねぇねぇ!旦開野さん!」
旦開野「はい。」
小文吾「おいら、千葉の漁師だがよ。あんたの歌の良さはわかるぜ。
    魂に触れるもんがあったよ~!」
旦開野「ありがとうございます。」
小文吾「いや、素晴らしい!!」
松五郎「さぁ、みなさん!ぱぁーっとやって下さい!!」
松五郎によって酒、料理が振る舞われ、楽しい宴が始まろうとしたその時、上手より役人が。
役人「やかましい!!やかましい!!騒がしいぞ!!
   許可なく祭りを行うことは禁止すると、関東御支配役、山下定包様からの
   きついお達しがあった筈だが?祭りは中止だ!!」
ずかずかと入り込んで祭を楽しむ人々を蹴散らす役人とその部下たち。
萎縮する人々。
松五郎、主催者として皆を庇うべく一歩前へ出る。
松五郎「ちょっと待っておくんなさいよ!
    関東御支配役だかなんだかしらねぇが、そんな奴の横車、
    いちいち聞いちゃあいられねぇんですよ!」
「そうだ!そうだ!」と頷く松五郎の手下たち。
松五郎「いいですかい?
    この隅田川界隈は、あっしら関東松五郎一家の縄張りでい!
    さぁ、皆さん!祭りを続けやしょう!」
そう意気込む松五郎に、問答無用と刀を抜く役人。
肩を切られる松五郎。
切られた松五郎はというと、
松五郎「いった~~い!痛い、痛い!!」
…なんて、つい素に戻ってしまう、琴音さん(笑)
カンナ、透かさず琴音さんに、
小文吾「親分!親分!」
と、言い聞かせる。
『そうだった!』と思い出して立ち上がる琴音さん、もとい松五郎。
松五郎「何しやがんでぇ。痛ぇじゃねぇ…かぁ~~~…。」
『かぁ~~…』の部分は力抜いて読んで下さい(笑)
フゥッとそのまま後ろに倒れる松五郎を慌てて支える子分たち。(西ヤンと武田さんです。)
役人「楯突く者は切り捨てよとの、山下様からのお達しでな。」
小文吾「そんな無茶苦茶なことがあるかよ!」
小文吾、傍若無人な役人を睨みつける。
役人「(切っ先を小文吾に向けて)そのほうも松五郎に荷担致すならば切るぞ。」
小文吾「面白ぇ!やれるもんならやってみやがれ!」
役人を挑発する小文吾。
役人「おおぅ!!」
小文吾に切りかかる役人。
その刃を避けた小文吾は、旦開野と背中合わせになる。
小文吾「危ねぇじゃねぇか!」
刀を振り下ろす役人。
すると、庇われるどころか逆に小文吾を遠ざけて役人の刀を受け止める旦開野。
旦開野「はっ!!」
小文吾「旦開野…!?」
役人たちの攻撃をかわしながら何とバク転まで披露の旦開野。
そのまま役人をあしらう。
役人「この…芸人風情が!」
旦開野「はっ!!」
部下「ほっ!」
旦開野「ふっ!」
部下「ぐっ!」
残る二人も軽く受け流し、舞台中央で片膝を着いて、ばっと両手を広げる旦開野。
バタバタと拍子木の音。
後方より黒子が現れ旦開野の長い袖や飾り部分を外す。
(歌舞伎用語では”引き抜き”というらしいです。舞台上で一瞬にして衣装を替えてしまう方法。)
芸人の衣装から身軽になった旦開野。
拍子木の音がピタッと止んだところで、立ち上がって見栄を切る。
すると…珠が光り出し、小文吾、旦開野、道節それぞれ懐から珠を取り出して見る。
小文吾「た、珠が…?!」
旦開野「我こそは犬坂毛野(いぬさか けの)!!
     父を山下定包に殺された恨み忘れ難し!
     今ここに我が正体を露に致し、定包に…挑む!!」
キッと役人を睨む毛野。
役人の一人が何かを思い出したように言う。
役人「!貴様が定包様の言っていた里見の犬か!?
   これは早くご報告せねばならん!
   退け!…ええい、退け!!」
部下に指示を出して足早に下手へ退く役人たち。
毛野「待て!!」
その後を追って走り出す毛野。
小文吾「旦開野……うわ!あ!」
小文吾の声に気付かず行ってしまう毛野。
小文吾「そうか…。あいつも珠を…。」
そう呟く小文吾の後ろを錫杖で音を立てながら歩き去ろうとする道節。
その道節を慌てて呼び止める小文吾。
小文吾「ちょっと待ってくれ!あんたも珠を持ってるんだろ?」
道節「……何の事だ?」
表情も変えずに白を切る道節。
小文吾「この珠だよ!(小文吾、懐から自分の珠を取り出して)
    おいらの父ちゃんはな、犬田文吾兵衛っていう、鯉釣りの名人だ。
    ある日、鯉のお腹の中からこの珠が出て来た。
    父ちゃんが死ぬとき、この珠をおいらにくれたんだ。
    おいらが持つとこの珠は光りやがって、頭の中に『他にも兄弟がいる』って
    声が響いたんだ…。『兄弟を捜せ』って声が響いたんだよ…。」
そう語る小文吾。
だが、道節は何やら印を組んでブツブツと真言を唱えている。
小文吾「あんたが通りがかったとき、その声と同じ声がしたんだ。
    この珠が、兄弟を呼ぶんだな…。おめぇもそうだろ…?!」
小文吾が話を振ったところで小文吾に術をかける道節。
道節「はっ!」
小文吾「にょ!?」
小文吾、珠を持ったままお猿のような妙なポーズを取らされる羽目に(笑)
道節「先を急ぐのでな。すまん。」
術をかけて足早に下手へと行ってしまう道節。
術をかけられた小文吾はそのまま変な踊りを(笑)
っていうか、ノリノリです(爆)
小文吾「ぴんぴろぴんぴろぴんぴろちん!
    ぴんぴろぴんぴろぴんぴろ、ぽんぽこちん!
    …はっ!!(術が解ける)あいつ…何やらせるんだ!?」
いえ、嬉しそうでしたから!(笑)
術が解けて我に返ると、幕の裏から松五郎親分が再登場。
顔をしかめながら役人に切られた所を押さえています。
小文吾「あ!親分!!大丈夫か?」
松五郎「平気ですよ、こんなもの…
    ほんの、虫刺され程度でぇ~~……。」
と、強がりながらもフゥッと倒れる親分。
慌てて支える子分二人。
小文吾「お、おい!ちょっと!早く医者に連れて行け!」
松五郎「いや、そいつはダメなんですよ!
    医者には絶対かかるなって叔父貴の遺言でぇ~~……。」
言いながらまたフゥッと(笑)
小文吾「早く医者に…!!」
松五郎「ダメ!ダメです!医者はぁ~~……。」
いちいち倒れ込む親分。
小文吾「早く医者に連れてけ!」
無理やり、親分を担ぐ子分二人。(西ヤンと武田さんです)
それぞれが親分の右脚と左脚を思いっ切り開いて担ぎます。
結構、際どいです(爆)
松五郎「あ~~~~!!!お股が、お股がぁぁ~~…!!」
そのまま下手へと退場。
小文吾「しっかり傷を治せよ~~!」
そう言って松五郎を見送ると、下手より兄弟の手掛かりを何にも掴めなかった荘介と角太郎が戻ってくる。
落胆している様子。
角太郎「いないね~…。」
壮介「ああ…。」
小文吾「(二人に気付いて)おい!こっちは珠を持つ者を二人も見つけたぞ!」
角太郎「ええ!?」
壮介「兄弟に会ったのか!?」
角太郎「ね、どこにいるの?!」
思い掛けない小文吾の言葉に、駆け寄る二人。
小文吾「ああ。一人はさっきの旅芸人だ!!
    名前を…犬坂毛野といって、山下定包に恨みを持つ者だって言ってた…。
    声をかける暇もなく、向こうへ行ってしまった!!
    そして、もう一人は…修験者だ。
    (術をかけられたのを思い出すように)…あいつはいけねぇ。兄弟とは思えねぇ!」
変な術かけられちゃいましたしね(笑)
小文吾のその発言に顔を見合わせる荘介と角太郎。
壮介「何としても八つの珠が必要なのだ。」
小文吾「(軽く)しょうがないんじゃない?」
壮介「『しょうがない』じゃない!」
小文吾「しょうがないもんはしょうがない!」
角太郎「努力したのぉ~?」
小文吾「失敬だな!したよ、努力は!」
小文吾の態度に呆れる壮介と角太郎。
小文吾「ところで…壮介。金はあるか?腹が減った。」
あくまでもマイペースな小文吾。
角太郎「さっきお団子食べてたじゃない!」
小文吾「あんなのは、おやつだよ!
    ああいうものは余計に腹減っちゃうんだよ!」
壮介「…金はもう、残り少ない。今日の宿代がギリギリだ。」
そうなると、小文吾の食費が旅費を圧迫している気がしてなりません(笑)
経済危機に陥った犬士たち(爆)
そんな二人に角太郎の提案。
角太郎「それなら…、ちょっと遠いけど我が家へお泊まり下さい。」
『助かった!』と乗り気の小文吾。
『有り難い。』と頷く荘介。
小文吾「それ名案!それに決定ー!!」
角太郎「では、暗くならないうちに急ぎましょう。こっちです。」
角太郎を先頭に、上手へ移動し始める三人。
小文吾「角太郎!」
角太郎「ん?」
小文吾「ご飯いっぱい食べさせてね♪」
角太郎「……いっぱい食べてね。壮介♪」
壮介「ん?!…ああ。」
小文吾「あれ?あれぇ~~??」
角太郎に軽くかわされる小文吾でした(笑)
そして、上手へと退場。

さて、墨田堤での最後のこのシーンもアドリブがございます☆
<貸切日>
小文吾「ご飯いっぱい食べさせてね♪」
何も言わないでさっさと歩く角太郎(笑)
小文吾「あれ~~?角ちゃ~~ん、何で何も言ってくれへんの~~??」

<千秋楽>
小文吾「ご飯いっぱい食べさせてね♪」
角太郎「……空耳かぁ。」
小文吾「角ちゃん~~??」
小文吾に手厳しい角太郎でした(笑)

舞台が暗転して幕が下りると、奈落より道節が登場。
何が考え込んでいる様子。
道節「この世は金だ。名誉だ。権力だ。
   力のある者だけが何もかも手に入れることが出来る。
   愛でさえ、金があれば手に入る。
   …だが、金で手に入らない愛もある…か?
   くくっ……!そうだ…あの犬坂毛野を…。
   (頷きながら)うむ…!…うむ!
   くくっ…あはははは…あははははっ…!」
何かを企んでいる道節。
…っていうか、マリアさんってば相変わらず悪者笑いが上手いです(笑)
道節、犬士なのにまるで悪役ですわ…。そういう役なんですけどね。
そのまま奈落が落ちていって道節、退場。
上手より現八と信乃が歩いてくる。
舞台中央へ移動しながら会話を進める。
現八「そうか、おまえも珠を持っていたのか…。」
信乃「あなたは私の兄弟なのですね。」
現八「…ああ。…我が家は代々、里見家に仕えた見張り頭であった。
   父は、金碗大輔様を逃がした事で、山下定包に斬られた。
   母は江戸に逃れ助かったが、心労が祟り私が七つのときに
   (懐に手を添えて)この珠を残し他界した。」
現八の話を聞きながら、「ご愁傷様です」と頭を下げる信乃。
現八「…私は山下定包が憎い。
   いつかこの恨みを晴らそうと、役人になり機会を窺っていたのだ。
   お前も、里見に縁(ゆかり)のある者か?」
信乃「はい。私の母は、金碗大輔の姉でございます。」
現八「何と金碗様の…!(礼をして)これはやはり深い因縁だのう。」
信乃「あの村雨丸は伏姫様の形見。里見の宝でございます!
   ですから、あの刀を将軍家に献上し、晴れて山下定包打倒のお許しを戴こうと…!」
現八「しかし、あの村雨丸は偽物ではないか。」
信乃「どこかですり替えられたのです!!
   !…そう言えば、先日宿を取らせてもらった葛飾の赤岩道場…。
   …そうだ!湯浴みの時、何やら妖しい気配を感じ、即刻逃げたのです。
   そうか、宝剣は既にすり替えられていたんだ!!」
現八「よし、早速確かめに参ろう。」
信乃「はい!」
信乃の言葉を信じ、確かめる為に赤岩道場に向かう二人。
下手へ消えると、幕が上がり「赤岩道場」と書かれた額が掛かっている建物が。

油屋「毎度どうも~!」
上手より菊ちゃん扮する油屋が油桶を持って登場。
赤岩道場から出て来た様子。
上手側桟敷席の横を通りかかったところで「どいたどいたどいた!!」と威勢のいい声で下手客席側の出入り口から岡持ちを持った魚屋が走って来て油屋と反対側、下手側の桟敷席横で止まる。
油屋「あら、魚屋さん。あんたもかい?」
魚屋「ああ。一角さんが魚持って来いってよ!」
油屋「そう。(桶を椅子にして座り込む)
   この不景気だってのに、どういうわけだかこの赤岩道場は連日連夜の宴会騒ぎ。
   魚も油もたぁ~んと使ってくれてねぇ。」
魚屋「へへっ。まったくだ!」
油屋「あっ…と、いけない。
   こんな所で…(立ち上がり、桶を見せる)油売ってる場合じゃなかったわ。
   ごめんくださいまし。」
スタスタと客席横の出入り口へ向かう油屋。
魚屋「おいおいおい、油屋が油売らなくてどうすんだよ!?」
油屋「魚屋さんも、早くしないと鮮度落ちちまうよ。」
そう言った後、客席横の出入り口より退場。
魚屋「うるせい!おめぇもそんなことしてるヒマあったら
   その下っ腹の脂身なんとかしやがれ!
   …ったく。さすが油屋だ、ベラベラと口が回りやがる。
   おおっといけねぇ!早くしねえと活きがいいのが台無しだ!
   (走りながら)こんちはーー!おまっとさーーん!!」
魚屋はそのまま舞台下手へと退場。
魚屋たちと入れ違いに上手客席側の通路から、角太郎たちが登場。
角太郎、荘介、小文吾の順に歩いています。
小文吾「角太郎、まだ~?」
角太郎「もうちょっと。」
小文吾「……まだ~?」
角太郎「もうちょっと。」
壮介「…あれか?角太郎、ここか?」
上手よりの桟敷横の通路に上がったところで、壮介が赤岩道場を指す。

はい、この『赤岩道場』の場面が二幕いちばんのアドリブポイントとなります(笑)
<貸切日>
魚屋「おめぇはその下っ腹の脂身なんとかしやがれ!」
油屋「いいとこに目を付けたね。この脂、太正浪漫堂で商品化狙ってるのよ!」
売れるんですか?!(笑)
そして、退場する油屋。
その後の魚屋のぼやき。
魚屋「あいつ、最近可愛くなってきたな…。」
ここで、ふと疑問。
油屋さん、おねぇ言葉だけど性別どっちなの?!と。
まぁ、菊ちゃんがやってますから…ね(笑)

入れ替わって入ってくる角太郎たち。
小文吾「角太郎、まだ~?」
角太郎「もうちょっと。…あ!こんな所に枝が。(枝を避けるようにくぐって)よいしょっと。
     気を付けてね。」
枝、あったんだ…(笑)
荘介「ああ。(角太郎に倣って枝の下をくぐる)」
何事もないようにそこを素通りする小文吾(笑)
小文吾を見る二人。
小文吾「…何かありましたか?!何かあったんですか?!」
荘介「…いや、別に。」
さすが、小文吾、オチてくれます(笑)

<24日昼>
魚屋「おめぇはその下っ腹の脂身なんとかしやがれ!」
油屋「(ふふっと笑って)好きなクセにv」
油屋、退場した後、
魚屋「とんでもねえ奴に好かれちまったもんだ。
   (岡持の魚を手に)逃げ出しタイ…。」
そう言っていつものように赤岩道場に駆けていく魚屋さんでした(笑)

<千秋楽>
油屋さんってば髪に白いバラをさしています。
妙に似合ってる…(笑)
魚屋「おい、どうしたんでぃ?その花は。」
何も言わない油屋さん。
普通に進んで、最後。
魚屋「おめぇはその下っ腹の脂身なんとかしやがれってんだ!」
油屋「…そんな憎まれ口叩いちゃって。
   本当はどぅわぁい(大)好きなクセにvごめんあそばせ。」
魚屋「まったくとんでもねぇ奴に好かれちまったな。
    (岡持の魚を手に)逃げ出しタイ…。」

入れ替わって登場の角太郎たち。
貸切日と同じく、また枝を避けて歩く二人に小文吾。
小文吾「何かあったのか?!」
荘介「いや、大したことはないが…(小文吾の足元を見て)
   犬のうんこを踏んでるぞ。」
荘介もなかなかやりますね(笑)
小文吾「ええ?!。ま、裸足じゃなくてよかった。」
荘介「よかったな。…あれか?角太郎の家は。」
本題に戻す荘介。
小文吾は草履を脱いで桟敷席のとこになすりつけてました(笑)
カンナさん、去年はお守りと間違って掴んでたし…散々ですね(^_^;)

舞台中央、赤岩道場前。
角太郎「ここが我が家、赤岩道場さ!」
小文吾「…しかし、おまえ名前は犬村角太郎ってんだろ?
    どうして”赤岩”道場なのだ?」
角太郎「わたしは捨て子だったんだ。
    それを父上が拾って育てて下さったんだ。」
角太郎の生い立ちに顔を見合わせる二人。
角太郎「わたしの名前は、守り袋の中に書かれていたんだって。
    父上の名前は赤岩一角。
    昔、里見家の剣術指南役だったんだよ?」
荘介「ええっ!?そうだったのか!」
やはり、みな里見に縁のある者だったのかと納得する荘介。
角太郎「父上~!父上~~!」
道場奥にに呼びかける角太郎。
すると道場の奥より、長髪で白髪の男が現れる。
一角「おお、おかえり。」
角太郎「角太郎、只今戻りました。」
一角「少し遅かったんだな。」
角太郎「父上、お友達を連れてきた。
    泊まって頂いてもよろしいですよね?」
一角「(壮介と小文吾を見て)友達?」
壮介「こんにちは。」
小文吾「こんにちは。」
一角に挨拶する二人。
一角「ああ、ああ。いいとも、いいとも。泊まって頂きなさい。
   さぁ、中へ中へ。」
角太郎と一角に促されて座敷に上がる荘介と小文吾。
一角「ああ、角太郎。おまえはお風呂の準備をしなさい。」
角太郎「あ、はい!(二人に向かって)ゆっくりしてってね。」
壮介「ああ、ありがとう。」
角太郎、風呂場に行く為に下手へと。
一角「ささ、座って。」
小文吾「あ、はい。(荘介に向かって)助かったな。」
荘介「ああ。」
座敷に座る壮介。小文吾は立ったまま庭を見渡す。
二人に聞こえぬよう呟く一角。
一角「(ニヤリと笑って)…美味そうだな。」
一角の呟きが何となく聞こえたのか聞き返す小文吾。
小文吾「…馬が、どうかされましたか?」
一角「え!?ああ、いや…お隣りでな、生まれそうなんだよ。…河童の子どもが。」
隣(上手方向)を見やりながら、苦しい一角。
小文吾「河童!?」
一角の発言に「?!」となる小文吾と壮介。
一角、慌てて話を逸らして、
一角「ああ、そんなことより!お腹、空いてないかな?」
小文吾「ああ!ちょうど空いてるんですよ~!」
『待ってました!』と言わんばかりに小文吾。
一角「ああ、じゃあすぐに用意させます。
   (奥に向かって)お~い、お食事二人前頼むよ~!」
仲居「は~い!」
一角「それじゃあ…。」
そう言って部屋を出ようとする一角を慌てて呼び止める小文吾。
小文吾「あ!あの…一つ、大盛りで。」
一角「あ、ああ、はいはい。…そちらの方は?」
壮介「あ、いや、わたしは。」
一角「ああ、そう。(奥に向かって)一つは大盛りだよ~!」
仲居「は~い!」
一角「それじゃあ、ゆっくりして下さいね。」
小文吾「はい。」
壮介「かたじけない。」
座敷横(上手側)の部屋に入っていく一角。
照明が落ちて、部屋の障子に人ならぬ影が浮かぶ。
三角の耳に…猫招き?
一角が部屋を通り過ぎると照明が元に。
二人は庭を眺めながら話している。
小文吾「見ろよ、壮介。いい庭だ。」
壮介「ああ。」
仲居「お待ちどうさま~。」
そこへお膳を持った山沢さん扮する仲居が登場。
『待ちに待ったご飯♪』と小文吾、足早に座敷へ。
仲居「ええっと…大盛りの方は…?」
小文吾「あ!こっちこっち!!」
仲居「ああ、はい。」
それぞれの前にお膳を出す仲居。
小文吾のお膳のご飯は…絵に描いたようにてんこ盛りです(笑)
壮介「早速のもてなし、かたじけない。…角太郎の分は?」
仲居「角太郎坊ちゃまは奥のお部屋でお召し上がりになります。」
壮介「そう…。」
小文吾「いいじゃねぇか。ほら、奴はおぼっちゃんだからよ。
    おいらたちとは何かきっと料理の内容が違うんだよ。
    おいらたちはこれで充分じゃないか!な!」
壮介「…ああ。」
小文吾「な、食お食お!!」
小文吾の言葉で箸を持つ二人。
小文吾「(茶碗を持ってご飯の匂いを嗅いで)ん…ちょっと油臭ぇな。
    でも、ま。腹が減ってはいいクソは出来ぬって言うからな!」
はい、今回もお約束(笑)
小文吾は立ち上がって食べる。
小文吾「う…う……うぅーー!!」
突然、苦しみ出す小文吾。
壮介「小文吾!?しっかりしろ、小文吾!!」
その小文吾を急いで支える荘介。
小文吾「んーーー!!……おいちいv」
どうやら全身で美味しさを表現したかったらしい小文吾。
壮介「…何だ。驚かすな。」
荘介は心配損…。
小文吾は茶碗を持って立ったまま、ご飯をかきこむ。
壮介「小文吾、うるさいぞ。落ち着いて食え。」
落ち着きのない小文吾を注意する荘介。
荘介は何だか小文吾の保護者みたいになってますね(笑)
小文吾「(ご飯をかきこんで)ん…ん…ん……。」
壮介「行儀が悪いぞ。座って食えよ。」
呆れ顔の荘介の再三の注意。
ふと、勢いよく食べていた小文吾の動きが止まる。
小文吾「!…い、いかん…身体が痺れてきやがった……。」
そう言ってその場に崩れる小文吾。
突然の事態に慌てて小文吾に駆け寄る壮介。
壮介「小文吾!?大丈夫か、小文吾!?」
不穏な空気。
笑い声とともに屋敷奥より現れる一角。
一角「はーっはははははっ。さぁて、…今夜お泊りになる代金を頂戴致しましょうかねぇ…。」
壮介「何!?」
小文吾「あんた…角太郎の父親じゃないのか?!」
一角「角太郎は知らんのだ。わしが、赤岩一角を喰ったことを!」
壮介「何だと!?貴様、何者だ!!」
一角「くっくっくっくっくっ…。にゃーーー!!!」
一角、一瞬で猫の物の怪に。
小文吾「!ああ!」
一角「はっはっはっはっはっ!我こそはこの葛飾に住まう妖怪・猫爺様だ!!
   人間に捨てられた猫の怨念が我が体内に宿り妖力を持った猫妖怪となったのだ!!
   お前たちも喰うてくれるわ!出でよ、我が手下ども!!」
猫爺の声で、障子を破って出て来たり庭の影から出て来たりと、あちこちから次々と手下が登場。
手下の猫たちは…OVA轟華絢爛2巻でのすみれさんの「青い鳥」での格好を想像して下さい(笑)
まんま、あの格好です。
猫爺の手下たちに囲まれてしまった小文吾と壮介。
動きがままならない小文吾を屋敷の中へと運んで壮介。
壮介「小文吾、しっかりと珠を持っているのだぞ!!」
小文吾「!危ない!!」
壮介の背後から忍び寄る猫。
だが、壮介はひょいと軽々避けて猫の攻撃をかわす。
壮介「はい!はい!!」
自分の草履を手に、それで猫の頬をバシバシと叩いて撃退。
小文吾と一緒に食事をしていたにも関わらず、変化のない荘介に猫爺。
猫爺「何故だ!?毒の飯を食ろうた筈!」
壮介「子供の頃より毒を食ろうて育ってきた。わたしに毒はきかない!」
『だから、おまえには負けない!』そう言わんばかりの荘介。
猫爺「(悔しそうに)ぬぬぬ…!こうなったら!(手を猫のように前に突き出して)……踊れ。」
壮介「えっ?うわっ!!」
猫爺の妖力に自分の意志とは関係なく身体が動き出す壮介と小文吾。
踊りながら屋敷の階段を下りて庭に。
下手側に壮介、上手側には小文吾。
猫も更に出て来る。
壮介「踊ってる……。…しかも間抜けだ…!」
小文吾「でも、何だか楽しいぞ♪」

はい、ここで一旦アドリブいきます!!
<貸切日>
一角「お隣でな、生まれそうなんだ。…河童の赤ちゃん。」
小文吾「河童ぁ~?!河童ぁ~?!っぱぁ?!っぱぁ?!っぱぁ~?!」
と、河童の”ぱ”を繰り返す小文吾。
ちなみにこのとき、一角と荘介は普通に会話進めてます。
で、食事はどうだ?というところ。
小文吾「あの、あの!一つは大盛りで!」
いつもは普通に言うこの台詞も柱によじ登りながらでした。
それに対し、一角。
一角「それに登りたいの?」

そして、食事の用意を仲居に命じた後、隣の部屋行ってそのシルエットで一角の正体が解るという場面。
一角さん、やたらノリノリ。
会場は大ウケ。
荘介と小文吾には舞台のセット的にも一角が何をしているか見えないので、「千葉助さん、何かやってるな」くらいに思っていたかもしれません(笑)
それが、次の台詞。
小文吾「見ろよ、荘介。いい庭だ。」
荘介「ああ。」
小文吾「庭師(客席)がちょっとうるさいな。」
すいません~~。千葉助さん、可笑しすぎなんですよ~~(笑)

<24日昼>
一角「お隣でな、生まれそうなんだよ。…河童の赤ちゃん。」
小文吾「河童ぁ~~?!」
一角「今回は双子らしい。」
小文吾「双子の河童ぁ~?!」
この二人に囲まれても冷静な荘介。
凄いです(笑)

<千秋楽>
一角「一つは大盛りだよ~!!」
仲居「はい、よろこんで~!!」
…って、居酒屋じゃないんだから(笑)
なんて、突っ込んでみたけどローカルなのかな…。庄○って…(^_^;)

そして、一角の正体発覚後。
猫を蹴散らすのにいつもは自分の草履を使う荘介ですが、何とこの回は来る時に犬の…を踏んだ小文吾の草履で(笑)
荘介「はい!はい!はーい!」
猫「…臭っ!」
猫、臭いでダウン(笑)
猫爺「何故だ!?毒の飯を食ろうた筈!」
荘介「(小文吾の草履を持った手の臭いを嗅いでから)子供の頃より毒を食らうて育って来た!
   わたしに毒は効かない!」
…っていうか、荘介は冷静にテンション一定のままでアドリブを入れるので面白いです(笑)

では、本編に。
猫爺や猫たちとともに猫踊りの荘介と小文吾でございます。

♪猫踊り

この振り付けはエリカの”黒猫のダンス”を彷彿とさせますね。可愛いです。
ダンサーのおねえさんの猫姿も良いですが(笑)
楽しそうに踊る小文吾と不本意そうに踊る荘介の対比が面白いです。
CD版と違って荘介も一緒に「♪にゃんこ にゃんにゃんにゃん」と歌います。
歌が終わって踊り疲れてヘトヘトになった二人。
思わぬところで体力を奪われ膝をつく。
猫爺「はっはっはっはっはっ!」
勝ち誇る猫爺。
そこに『ヒュン!』と、猫爺目掛けてどこからか飛んでくる小刀(くないかも?)。
バシッとそれを受け止める猫爺。
猫爺「何奴!?」
屋敷内下手側より、角太郎が短刀を構えながら登場。
角太郎「犬村角太郎、見参!
    我が屋敷内での勝手な振る舞いは許さんぞ、化け猫!!」
猫爺「にゃ!」
角太郎「…!ああ!それは、父上の着物…!!」
驚く角太郎に猫爺。
猫爺「お前の父はわしが喰ろうたにゃ!」
角太郎「何…?!」
猫爺「お前ももうちょっと大きくなってから喰ろうてやろうと思ったが…。
   …仕方ないにゃ~~。角太郎、お前もバーベキューにゃ!
   者ども!やれい!!」
猫爺の指示で角太郎に襲い掛かろうと構える手下たち。
壮介「角太郎危ない!!」
荘介の言葉とほぼ同時に、空高く飛び上がる角太郎。
しかも、空中で回転しながら上手へと着地!!
一幕だけでなく二幕も飛びましたよ!アイリス!!
その上、飛びながら前転まで!!
もうホントに…凄いとしか言えないけど凄い!!
着地した角太郎に小文吾。
小文吾「いいぞー!角太郎、かっこいい!!」
壮介も拍手。
笑顔でVサインの角太郎。
猫爺ペースだった場が犬士ペースになったところで、猫爺。
猫爺「それにしても、お前の父の赤岩一角は…、
   あ!弱かったにゃぁ~~~!!」
角太郎を挑発。
にゃあぁ~~!と周りの猫も頷く。
角太郎「父上は弱くなどない!笑うな!!」
猫爺「ダメな父親だから笑ろうたのにゃ!」
完全に馬鹿にし態度の猫爺に角太郎は怒りを露わにする。
角太郎「ダメじゃない!!わたしの父は立派な人だ!
    血の繋がらないわたしを、大切に育ててくれた!
    我が子以上に、大切に……それを、お前は!!
    うわあぁぁぁぁ!!!」
そう言って屋敷から庭に飛び出る角太郎。
怒りの為に我を忘れている様子。
その角太郎の様子に嬉しそうな猫爺。
猫爺「憎め憎め!
   そうやって憎しみに満ちた人間の肉はこれまた美味いんだにゃ~~!」
角太郎「!おのれぇぇ~~!!」
馬鹿にされたとますます怒る角太郎。
猫爺「にゃ!」
猫爺の手から妖力の糸が。
角太郎はそれを直撃した体勢。
直後、舞台照明は赤に。場は一時停止している状態。
上方より玉梓の首が登場。
玉梓「憎め憎め…!
   憎しみこそ、人間の本当の姿なのだ!!」
そう言って去っていく玉梓。
スポットは再び舞台に。
猫爺の攻撃を喰らってよろける角太郎。
壮介「角太郎!!」
角太郎「くっ…!!」
抵抗する角太郎。
だが、手下たちに捕まり倒れてしまう。
壮介「角太郎!!」
角太郎を助けようと手下の猫を何とか振り切った荘介と小文吾であったが、その二人にも透かさず猫爺の妖術が。
猫爺「スローモーション!!」
妖術にかかった二人は、スローで動く。
小文吾「(スロー状態で)くぁ~~くぅ~~たぁろぉ~~…!」
動きがスローの為、角太郎の所に行く前に手下たちに捕まってしまう二人。
術をかけた猫爺は…舞台中央前方突出部分で何故かボーリングのスローインのジェスチャー(笑)
二人が捕まった頃に、
猫爺「はい!ノーマルモード!!」
元に戻ると、壮介は「命!」って感じで立たされ、小文吾は大股開かされて担がれている状態に(笑)
壮介「くっ…わたしを喰え!そしてその二人を助けよ!!」
小文吾「いや、俺を喰え!俺を喰え!」
捕まっている為、手下たちに久本雅美みたいに手を股関節の所で上げ下げさせられている小文吾(笑)
シリアスなシーンなのに笑いの起きる会場。
荘介の「命!」も可笑しいんですけどね…。
猫爺「美しい兄弟愛じゃのう。
   だがな、そんなものはなーーんの役にも立たんのじゃー!」
小文吾、猫爺に更に開脚状態にされてしまう。
と、そこへ…、
信乃「待て待て待てぇーーい!!」
猫爺「!…あっ!待て、とお止めなされしは!?」
下手客席通路より信乃、上手客席通路より現八が走って来る。
それぞれ、桟敷席横通路で止まって、
信乃「犬塚信乃!」
現八「犬飼現八!」
名乗りを上げた後、舞台に上がって、
信乃「村雨丸の探索に参ったれば、何とも妖しい空気!」
現八「噂に聞く、葛飾に住む化け猫とみた。」
信乃「おのれ…宝剣をネコババしたのはお前だな!!」
そう言って、ビシッと人差し指を猫爺に向ける信乃。
スス…と静かに信乃に近付く猫爺。
何を思ったか信乃の人差し指に自分の人差し指を合わせる。
不審な猫爺の行動に何事かとパッと指を隠す信乃。
…っていうか、それってまんま「E.T.」じゃないですか!(笑)
猫爺「ネコババではない!わしはネコジジイ様じゃ!
   わっはっはっはっはっはっ!
   あ、ブァカ!あ、バカ!!ひゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ!!
   (自分の懐に差してある短刀を触って)この宝剣はわしが貰うたにゃ~!」
完全に馬鹿にしている猫爺。
信乃「おのれ!それは里見家の家宝!返せ!!」
二人同時に刀を抜く。
猫爺「あ!…抜いちゃいましたね?」
現八「問答無用!退治してくれるわ!」
猫爺を取り囲むように刀を構える二人。
舞台の中央で膝をつく猫爺。
猫爺「面白い。すんげぇ面白い!
   (テンション低く)じゃどっちからきます?(信乃に)こっちから?(現八に)そっちから?」
それを合図に先ずは信乃。
信乃「でぇい!!」
が、いともあっさりホイホイホイッとかわされてしまう。
現八「やぁーー!!」
続けて攻撃の現八も信乃同様、軽くあしらわれてしまう。
現八避けられたところで、信乃と二人で猫爺に斬りかかる。
猫爺「ええい!にゃーー!!」
妖術を使う猫爺。
舞台照明は赤系に。
信乃「くっ…!」
猫爺「我が妖力を持って…、呪い殺してくれるわーー!!」
猫爺の強大な妖力によって、一瞬にして道場の壁が崩れ落ちボロボロになっていく。
(歌舞伎用語で”屋体崩し”というそうです。)
歓声を上げる手下たち。
が、その隙をついて壮介と小文吾が猫爺の脚を掴みます。
猫爺「あれ?あれ?は、放せ!」
小文吾「放さん!」
壮介「放すものか!!」
立ち上がり猫爺を見据え、短刀を構える角太郎。
角太郎「父の…仇ーー!!」
走って一気に猫爺の腹に短刀を突き刺す角太郎。
猫爺「ぐわぁぁ~~~!!……ぬぁ~んちゃって!」
一瞬、苦しむ振りをするが、すぐに両手を頭の上に乗せ、ふざけたポーズの猫爺。
脚を押さえていた荘介と小文吾を蹴散らして豪語する。
猫爺「こんなもん、わしには効かんのじゃ!にゃーー!!」
圧倒的な強さの猫爺。
その妖力の前に再び倒れる角太郎、壮介、小文吾。
何とか妖力に耐えた信乃と現八は気を取り直して猫爺に挑む。
手下たちの攻撃をかわし、猫爺を捕らえて何とか羽交い締めにする現八。
現八「信乃!」
現八の合図で身動きが取れなくなった猫爺の懐から村雨丸を奪取する信乃。
早速、村雨丸を抜くと、辺りに神秘的な光が、そして力が充満する。
その神々しい光に動きが鈍る猫爺と手下たち。
信乃「村雨丸よ、我が手に力を与えよ!…覚悟!!」
猫爺「うぉ!?」
猫爺に村雨丸を突き刺す信乃。
信乃の攻撃が命中した、猫爺は苦しそうに舞台中央突出部分に。
猫爺「ぐっ…あ…!!…ぬぁ~んちゃっぐわぁぁ…!!」
やっぱり喰らってない?!と思わせぶりな態度だが、今度は何せ神の力を直に喰らっているのでさすがに辛そうな猫爺。
ふらふらと道場の座敷へ上がって、
猫爺「な…な…ぬぁ~んちゃ…ぐはぁ!!」
また?!とはならず。
今度こそ猫爺の最期。
しかし、最期までやってくれました!
さすが、千葉助さん(笑)
猫爺「お…お…お疲れ様でしたーー!!」
両手を上げてポーズを取って、道場の後ろへ退場(笑)
出番終了、お疲れ様でした~~(爆)
それに倣って手下たちも「お疲れ様でした!」と一礼をしてさっさと散っていきます。

では、赤岩道場のアドリブもラストでございます。
<貸切日>
妖力でスローモーションの間、ボウリングのスローインのモーションで。
投げた後、会場から「ストライク!」の声。
「よしっ!」とガッツポーズの猫爺でした(笑)

信乃「おのれ、宝剣をネコババしたのはお前だな!!」
と、指をビシッと猫爺に向けるシーン。
いつもなら自分の指を合わせる猫爺ですが、何と信乃の指をパクッと(笑)
マジでビックリして指を引っ込める信乃。
そりゃあ、びっくりしますよね。いきなり、パクッは(^_^;)

<千秋楽>
角太郎が飛び上がって上手側に着地したあと、更に。
角太郎「ちょっと待て!」
何とその場で再び飛び上がって、
角太郎「おまけ~!」
と、今度は3回ほど後転を披露。
かっこいい!!角太郎!!
凄い!!(≧∇≦)
小文吾たちの歓声もいつもより大きく、
小文吾「いいぞ!角太郎!かっこいい!」
荘介「凄いぞ、角太郎!」
角太郎、再び上手側に着地して、
角太郎「いえ~い!」
と、Vサイン。

猫爺のボーリングのスローインのジェスチャー。
会場からの「ストライク!」の声が若干遅かったのか、「ああ…」と残念そうなジェスチャー。
ストライクとはならなかったようです(笑)

去り際の台詞は…、
猫爺「新春公演でお会いしましょーー!!」
で、ございました。
千葉助さん、新春公演ご出演されるそうです(笑)
新春こそ千葉助さん本領発揮(爆)な気がするので楽しみですね☆

では、本編に戻りましょう。

信乃「…何とも恐ろしい敵だったな。」
現八「ああ…。」
刀を鞘に収めながらそう話す信乃と現八。
現八「その力、まさに村雨丸!」
信乃「はい!」
現八の言葉に力強く頷く信乃。
そして、すぐに倒れた三人を起こす。
現八「(角太郎と小文吾を起こしながら)大丈夫か?」
信乃「(壮介を起こしながら)大丈夫ですか?」
三人とも大事には至らなかった様子。
角太郎は起きあがり立ち上がって、二人にお礼の言葉をかける。
角太郎「あの…!
    父上の仇を取って下さり、ありがとうございました。
    わたしは…、」
角太郎が自己紹介しようと口を開いた次の瞬間。
全員の珠が光り輝く。
皆、自分の珠を懐から出して確かめる。
現八「ああ…?!」
壮介「皆、珠を…!?」
珠を手に持ち、舞台中央前方へ集まる犬士たち。
ここで一旦、舞台前方を残して幕が下ります。
現八「信乃。伏姫様と大輔様が、我々を呼び寄せたのだ!」
そして、それぞれが珠を手に名乗りを上げる。
信乃「私は、犬塚信乃!八犬士が一人!」
現八「犬飼現八!」
角太郎「犬村角太郎!」
小文吾「犬田…(手にした珠を中腰で下から上に上げながら)小文吾!」
そして、締めは…
壮介「(一礼して)犬川壮介です。」
簡単に礼をして終わる壮介。
思わずズルッとなる他の犬士たち(笑)
気を取り直して信乃。
信乃「なるほど。不思議な巡り合わせで、こうして五人が揃いました。
   必ずや残る三人も見つけ出し、この世に仇名す山下定包の野望を打ち砕きましょう!」
全員「おう!!」
珠を一人一人前に差し出し、円陣を組んで『打倒・山下定包!』と結束する。
全員「おお!!」
決意も新たに歩き出す犬士たち。
そこに、「待った待ったぁーー!!」と上手側客席通路から走って来る男(ベロムーチョ武田)が一人。
男「おーっとっとっと!おーっとっとっと!」
大げさに走って来た勢いを片足で止める。
無事に止まると、上手側桟敷横の通路へ上がって犬士たちに礼。
男「待っていてくれてありがとうございます。」
それは雲国斉さんのパクりですか?!(笑)
正面向いて中腰で、右手を前に出して挨拶。
男「あっしは…えーっと…か…か…。」
どうやら台詞を忘れた様子。
小文吾「…関東松五郎の子分の!」
透かさずフォローの小文吾。
男性「(ポンッと手を叩いて)ああ、そうそう!小岩の元太っていいやす!」
小文吾「おお。親分は大丈夫か?」
元太「へぇ、おかげさんで!」
小文吾「そうか。そりゃよかった。じゃあな。」
そう言ってさっさと行こうとする犬士たち。
慌てて止める元太。
元太「ちょっ、ちょっと待って下せぇよ!
   これじゃあ、あっし何の為に出て来たか判らないじゃないですか!」
桟敷席横の通路より舞台に上がりながら先ほどと同じポーズをとって、改めて長台詞に挑戦。
元太「あっしはここしか無いですからね!
   えーっとえーっと…青珊瑚を身に纏ったおかっぱ頭に変な帽子を被った修験者がですね…。」
小文吾「…あいつだ!」
元太「そうそう、そいつ!で、そいつが八犬士の一人、大坂毛野を…、」
あれれ、何か違いますよ~(笑)
小文吾「ちょっ、ちょっと待て!大坂じゃないだろ、点を打て、点を。」
ここでも、フォローの小文吾(笑)
元太「八犬士の一人、太坂毛野を…!!」
違う違う!ベタだけど違う!(笑)
思わずズルッとなる犬士たち。
小文吾が更にフォロー。
小さく「わんわん。」と犬のジェスチャー。
すると元太は…、
元太「わんさか?」
小文吾「そう!」
小文吾・元太「わんさか、わんさか、わんさか…!」
踊り出す二人(笑)
でも、この「わんさか」。
初日はなかった気がするので、これも日によってアドリブで入れていたのかもしれません。
そして、小文吾。
小文吾「違うだろ!!右上に点を打つんだ!」
元太「…八犬士の一人、犬…坂毛野を山下定包に差し出すから、お前ぇらが…が?…に?」
小文吾「いや、聞くなよ…。」
元太「が!が、が、が!邪魔しないようにっ…て俺が伝言を言い付かってきたわけですよ!」
小文吾「おい!!(元太の胸ぐらを掴みながら)おめぇ、何言ってるのかさっぱり解んねぇんだよ…。
    もう一度、ちゃんと解るように説明しやがれ!!」
元太「しょ、初日の本番までには何とか…!」
小文吾「…今、初日の本番なんだよ!!」
ちなみにここのやり取りは公演日によって変わります。
「24日の昼公演までには何とか…」「今が24日の昼公演なんだよ!」などといったように。
つまり元太は公演終わっても台詞覚えないんですね(笑)
元太「あ~~~!!」
小文吾に突き飛ばされ、上手袖へと消える元太。
『しょうがねぇ奴だぜ…』と小文吾は犬士たちの列へ戻ろうとすると、壮介が小文吾に聞く。
壮介「小文吾、毛野というのは兄弟なのだろう?」
小文吾「ああ。」
壮介「すぐに助けに行こう!」
現八「我ら兄弟が力を合わせれば…!行こう、定包の城へ!!」
頷きあって下手へ走り出す犬士たち。
そこへ、上手袖より再び元太が登場。
カチッカチッと景気づけに火打ち石を叩いて見送り。
元太「いってらっしゃいやし!!」

はい、この元太のシーンが二幕最後のアドリブポイントとなります。
<貸切日>
元太「えーっと、えーっと…何だっけ?
  ああ!青珊瑚を身に纏ったおかっぱ頭の変な帽子被った若作りの…、」
若作りって…(^_^;)
あとで撃たれますよ?(笑)
小文吾「おかっぱ頭に若作り…?」
元太「ああ!あの、変な術使うマリアさん!マリアさん!…あ!」
役名違う!と他の犬士たちも「ああ~~…」って感じで苦い顔(笑)
小文吾「修験者だろ、修験者!」
やっぱり、小文吾がフォロー。

元太、小文吾に突き飛ばされて退場のあと、荘介。
荘介「ここからはしっかりやるぞ。」
頷く犬士たち。
荘介「小文吾、毛野というのは兄弟なのだろう?すぐに助けに行こう!」
あれ?荘介…。
小文吾の返事を聞いてませんよ(笑)
透かさず現八。
現八「しっかりしてないな。」
思わず苦笑の荘介。
荘介「申し訳ない(^_^;」

<千秋楽>
元太「あの、あの変な術使うマリアさん!」
千秋楽になっても間違える元太。
そこに上手袖より何と灯油缶を手に山下定包登場!(笑)
ガコーンと手にした灯油缶で元太の頭を。
定包というよりボスですね。
定包「ちゃんと台詞覚えてこい、おまえ!」
そう言ってさっさと退場。
っていうか、敵役なのにこんな所に出て来ちゃって…(爆)
次、出番なのに(笑)
ビックリしたのは元太だけじゃなくて犬士たちも同じ。
突然の敵役登場ですからね~。
元太「あの、修験者!修験者!」
小文吾「おい!…おまえ今何か見なかったか?!」
元太「い、いいえ何も!」
小文吾「空目だな!今のは空目だよな?!」
元太「空目!空目!」
そう。定包の幻です。きっと(笑)

相変わらず台詞覚えてない元太は間違えまくり。
信乃と現八はその場にしゃがみ込んでます(笑)
小文吾「あはははは…(乾いた笑い)
    (半泣き状態で)おめえよぉ、おいら訳解んなくなっちまったよ…。
    もう一度、お客様に解るように最初からやってみろ。」
元太「明日までには必ず!」
小文吾「おい、おまえ明日もやる気か?やるんだな?本当にやるんだな?」
元太「すいやせん…(汗)俺、ウソついてました…。」
小文吾「おまえはもう、ウソつくんじゃんぇよ!もう、すっこんでろ~~!!」
ここでようやく元太が一旦退場(笑)
そして、傍観していた荘介。
荘介「…そろそろいってもいいか?」
小文吾「ああ!いってくれ!」
半ばホッとした様子の小文吾(笑)
本公演中ずっと元太のフォローしてましたものね。
犬士、定包の城目指して出発。
そして、見送る元太。
ここも無事に終わる筈がなく、後ろから松五郎親分に灯油缶で殴られる元太。
松五郎「元太!てめぇ…一家の名前忘れるんじゃねぇよ!」
元太「(ぽつりと)…ここ、俺のいい所なんですけどね。」
松五郎「だから今からゆっくりやりな!その代わり、てめぇは…破門だ!!」
元太「えぇ~、改めまして…。(火打ち石を鳴らしながら)いってらっしゃいやし!」

では、シリアスな本編へ。
二幕ももうクライマックスです。
元太退場後、舞台は暗転。
しばらくして幕が上がると、そこは山下定包の城。
薄暗い異様な雰囲気。
悪の要塞といった感じ。
そして、定包が勝ち誇ったかのように歌います。

♪悪の華

この歌は…ホント痺れます!!
ダンディさん本領発揮といった感じで会場全体に響くその美声。
音を全身に浴びた感じ。
定包の悪としてのカリスマ性が一曲に表現されているというか。
まぁ、とにかく聴き惚れてしまいますよ。圧倒されます、そのお声に。
舞台装置も悪の要塞らしく、定包の座る上座の両サイドには松明というか炎が揺れています。
揺れているというより、曲の間奏で吹き出してきたというか。
(歌舞伎用語では”本火”というそうです。本物の火を使うということで。結構、そのままなんですね…。)
曲終了後、下手にいた兵士が定包の前に。
跪いて報告。
兵士「定包様。道節と名乗る者が、八犬士の一人を捕らえたと…。」
定包「何?犬士の一人を?
   (持っていた扇をバッと広げて)それはよい余興じゃ。通せ!!」
定包のその声とともに、奈落から道節と道節によって捕らわれ縄で縛られた毛野が登場。
道節「犬山道節!まかり通ーーる!!」
毛野はその場に道節は上手寄りに移動。
定包の斜め前に跪く。
定包「わしに仇なす犬士を捕らえたと?」
道節「はい。この犬坂毛野は八犬士の一人にございます。」
定包「ほぉ…。」
毛野に歩み寄る定包。
定包「(ニヤと笑って)あの馬鹿忠義者、犬坂めの…。」
扇で軽く毛野の顔を自分に向かせる定包。
目線を落とさずに定包からすぐに顔を背ける毛野。
定包は道節の正面位置に戻る。
定包「くくく…これは面白い。
   だが犬山道節。お前も珠を持つ犬士の一人であろう?
   この定包の目、節穴ではないぞ。これは何の企てじゃ?」
刀を鞘ごと持って立ち上がる仕草を見せる道節。
が、すぐに笑みを浮かべ再び定包の前に跪く。
道節「ふ…ご不審の点、百も承知。
   しかし山下様。
   (懐をポンポンと叩きながら)このような珠を持っていても、何の役にも立ちません。
   愛の光など、乱世の世に消え失せるでしょうな。」
定包「ほぉ…宿命の兄弟を裏切ると申すか?」
道節「宿命?兄弟?(フッと笑って)そのようなものに縛られるつもりはありません。」
定包「(道節の後ろへ移動しながら)この定包に従うと申すか?」
道節「(頭を下げて)…御意。」
定包「(半ば怒鳴るように)ならば犬坂毛野を斬れ!今直ぐここで!!
   直ぐさま斬って見せよ!!!」
道節の言葉の真偽を見るべく、そう命ずる定包。
定包のその命に道節、立ち上がって毛野の後ろに立ち、ゆっくりと刀を抜いて、構える。
道節が毛野を斬ろうと刀を振り上げた瞬間。
兵士たちの騒がしい声が。
下手より、それぞれ武器を手にして犬士たちが登場。
信乃、現八、小文吾が太刀。角太郎は短刀。壮介は鎌を持っています。
信乃「定包ーーー!!!」
小文吾「道節、毛野を離せ!!」
道節「(毛野を連れて舞台中央に移動しながら)動くな!動くと毛野を斬るぞ。」
小文吾「汚ぇぞ…!!」
道節「うるさい。」
信乃「道節殿!あなたも愛の珠を持つ者!
   我らが母、伏姫様の御心をお持ちの筈です!」
道節「そのようなものは捨てた。
   私は天涯孤独の修験者だ。いかに生きようとも勝手!」
現八「何!?」
道節「(犬士たちを牽制しながら)動くな、動くな…。」
毛野を人質に取られては動くに動けない犬士たち。
犬士同士のいさかいに満足そうな定包。
定包「道節、斬れ。犬坂毛野を斬れ。
   犬士どもの前で、兄弟を血祭りに上げよ!」
道節「…解りました。」
小文吾「やめろっ!」
角太郎「ダメ!」
兄弟たちの制止の声も構わず、毛野に向けて刀を振り下ろす道節。
前に膝をつく毛野。
「あ…っ…。」と兄弟たちの驚愕の声。
次の瞬間。
毛野を縛っていた縄がバサッと落ち、素早く短刀を抜く毛野。
毛野「定包…!覚悟!!」
毛野に斬りかかろうとした兵士を道節が抑え、毛野は定包の前に。
毛野が開放されたことで他の犬士たちも、定包を取り囲む。
角太郎、壮介が定包の刃を捕らえたその隙に村雨丸を抜き、定包に突き立てる信乃。
信乃「村雨丸よ!」
定包「くっ……道節…!!」
瞬時に手の平を返した道節に斬りかかる定包。
定包の攻撃も刀で受け流す道節。
七犬士に囲まれた定包。
一気に斬りかかる犬士たちに、妖力で雷を落としその一瞬の隙をついて奈落の上へと移動。
定包「大百足の術!受けてみよ!!」
スモークと共に定包、奈落へ消えると、辺りは人魂も漂って、妖しい雰囲気。
信乃「油断するな!!」
辺りを警戒する犬士たち。
道節はここで、上座の裏へ消えます。
すると、奈落から定包の笑い声と共に大百足が出現。
定包「我が体毒、受けてみよ!」
口から煙を吐く大百足。
応戦しようと斬りかかるものの次々に毒を受けて退かざるを得ない犬士たち。
現八「くっ…毒だ!!」
大百足「…喰らえ…喰らえ!!」
皆が手も足も出せない中、一人だけ平然としている犬士が。
壮介「はははははっ……!
   我が家は里見家の毒味役!わたしに毒は…効かない!!はぁ!!」
百足の頭部を斬りつける壮介。
大百足「ぐああぁぁぁ…!おのれぇ~~!!」
荘介によって力が弱まる大百足。
壮介に続けと大百足に斬りかかる犬士たち。
が、すぐに再生してしまう大百足。
壮介「何!?」
大百足「くくくくくっ…。」
勝てる術はないのか?!
そこへ響く道節の声。
道節「待てぃ!山下定包!!」
スモークと共に上座後方が二つに開き、そこから巨大蝦蟇に乗って印を結んでいる道節が登場!
今回、ホント舞台装置、演出凄いです!!
児雷也みたいだ、道節…。
道節「貴様の大百足の術、この犬山道節が破ってくれるわ!」
大百足「おのれ、ちょこざいな!!」
道節による大百足の術破り。
真正面から蝦蟇に攻めかかる大百足。
蝦蟇と大百足の勝負。
道節「はっ!!」
大百足「ぐああ!!」
道節「さぁ、みんな!今だ!力を合わせて!!」
犬士「おお!!」
道節の操る巨大蝦蟇によって弱った大百足。
道節の合図で一気に大百足の身体を貫く犬士たち。
これが決定打となり悲鳴をあげながら奈落へ退散していく大百足。
大百足が去って、静かになったそこに玉梓の怨霊が漂う。
道節「皆、珠を出せ!」
犬士「はい!」
道節の合図で犬士たちが珠を掲げると、玉梓は苦しそうに声を上げる。
玉梓「おのれ…!おのれ、悔しや里見の犬士ども…!
   ああ…我が妖力が消える…おのれ悔しや…怨めしやー…!」
火花と共に玉梓の首が消えると、力無く山下定包が奈落から登場。
玉梓の力も失い、息も絶え絶えな様子。
道節「毛野、現八。親の仇を取れ!」
毛野・現八「はい!」
二人にそう命じた後、道節は巨大蝦蟇に乗ったまま舞台後方へと下がっていく。
再び閉まる上座の後方。
その間に、舞台中央突出部分では仇討ちを果たす毛野と現八。
現八「でぇい!」
毛野「はっ!」
刀を振り回して抵抗する定包であったが、最早それに耐えうる力もなく。
定包「ぐあぁぁ!!(力無く膝をついて)が…ぐ…うがぁぁぁぁ……!!」
最期の叫びとともに定包は奈落へと沈んでいく。
悪が去り静かになった城内。
セットもない状態です。
そこに術を解いた道節が舞台奥より兄弟たちのもとへ。
道節「皆、無事か?」
小文吾「道節、貴様…!よくも毛野を!!」
道節の姿を見た瞬間、その胸ぐらを掴む小文吾。
抵抗しない道節。
壮介「やめろ、小文吾。」
道節「止めるな壮介!こいつは毛野を…!」
毛野「お止めください。
   私は、一度たりとも道節様に斬られるとは思っていませんでした。」
小文吾「何だと?」
毛野の言葉に道節の胸倉から手を放す小文吾。
そして、道節は兄弟たちに向かって頭を下げる。
道節「(土下座して)…すまん、皆!皆を騙してしまった…。
   しかし、山下定包を討ち果たす為には、あやつを油断させねばならなかった…!
   (毛野の方へ向き直って)すまん、毛野…!!」
全てを理解していたかのように、笑って頷く毛野。
現八「敵を欺くには、まず味方から…ですか?」
現八の言葉に、黙って頷く道節。
道節に歩み寄って信乃。
信乃「…あなたの言葉を信じます。
   生まれた時や場所は違えど、その志を同じくした者が珠を持ってこうして集まった。
   我らがそれぞれに愛の心を持って、この世を照らしましょう!」
そう言って道節に手を差し出す信乃の手を硬く握り立ち上がる道節。
兄弟の心が一つになり、皆で微笑む。
が、角太郎。
角太郎「…ですが、未だ珠が足りません。」
現八「そうだ…仁の珠を持つ者が居ない。」
舞台中央前方突出部分に集まる犬士たち。
後方では幕が下りる。
小文吾「そうだ…。珠は七つしかない。」
道節「伏姫様が帰依した北斗の神とは空高く輝く北斗七星の事だ。
   伏姫様の魂は、あの輝く七つの星々に導かれた。
   今、我々の持つ珠が七つ。
   我ら七つの珠を以て、八つ目の無限に輝く珠を探し出せという事ではないであろうか?」
壮介「八つ目の、無限に輝く珠……。」
毛野「それは…、未来という事でしょうか?」
道節「!…そうだ…未来だ!我らが行く末だ!
   それは憎しみの無い、愛と平和に満ちた世の中だ。
   それこそが、伏姫様が、金碗大輔殿が、里見義実公が望まれた世なのだ!
   …兄弟たちよ。
   仁の珠持つ八人目の兄弟を探し出し、そのような世の中を作り出そうではないか!
   それこそが、我ら犬士の使命!」
ここで幕が上がって、紗幕の向こう側には伏姫、八房、大輔、義実。
定包によって殺された里見の者たちが一同に正面を向き犬士たちを見守っている。
改めて心を一つに結束を固くする犬士たち。
全員、奈落上に立って、
信乃「…この世のどこかにいる兄弟よ。未だ見ぬ兄弟よ!」
現八「同じ志を持って、待っている兄弟よ。」
小文吾「約束しよう。わたしたちは、必ず君と出会う!」
壮介「八つ目の珠を、心に持つ君よ。」
角太郎「約束しよう。わたしたちは、必ず君を探します。」
毛野「兄弟よ、目を閉じて思え。私たちを…。
   志を高く掲げて!あの星よりも高く輝いて!」
道節「…さぁ、行こう!兄弟に会いに!!」
頷き合い、奈落部分で空高く見上げる犬士たち。
そのまま奈落が下がって犬士たちは旅立つ。
直後。
舞台は一転して妖しい雰囲気に。
舞台上方に現われる玉梓の怨霊。
玉梓「おのれ、悔しや里見の犬士ども!
   八つの珠は揃いしない。必ずや、悪の心を持つ者がお前たちの道を阻むであろう。
   夢は大人になって消え失せ、希望の光は色褪せ、己の道に迷い
   他人を恨み、仲間を裏切り、疲れ果てた老人になって死ぬのだ!
   それが、お前たちには相応しい…。八つ目の珠など、この世には無い!!
   ははははははははっ……!!!!」
そう言い放って消える玉梓の怨霊。
雲国斉「…恐ろしい言葉を残して、玉梓は無気味に笑い、
    暗黒の世界へひとまず退散したのであります。
    しかし!いつまた玉梓の妖力が復活して、この世に悪行はびこる日が来るやもしれません!
    ですが…今宵のお話はひとまずここまで。

    天暗く怨霊は乱るるは 女の恨みの恐ろしさ
    さて、愛の珠持つ犬士達は 残る珠の行方を探し
    輝く星に照らされて 絆を深め旅に出る
    桜便りもそよ吹く風も 若い犬士の頬染めて
    あれをご覧と輝く先に 明日の夢が輝いた!

    ちょうど時間となりました。この物語の先行きは
    それは皆様、心の中で紡ぎ出されて下さいます様
    お願い申し上げまする~~」
ベベベンッと三味線を鳴らして退場の雲国斉さん。
此度も聴き惚れるような語りでございました。

さて、舞台は紗幕が上がると階段状になった舞台の一番上に並ぶ犬士たち。
紗幕ごしに犬士たちのシルエットが見えるのですが、これが妙にかっこよくて好きでした。
そして、劇中劇『新編・八犬伝』もフィナーレです。
舞台下手より壮介、現八、信乃、道節、毛野、小文吾、角太郎の順に並んでいます。

♪未来の兄弟へ

二番終了後、舞台中央前方の突出部分に立つ犬士たち。
そして…、
全員「仁!」
全員「義!」
壮介「己を捨て、人のために尽くす!」
全員「礼!」
角太郎「敬って人の道に生きる!」
全員「智!」
毛野「心で善悪を見極める!」
全員「忠!」
道節「偽らざる気持ち!」
全員「信!」
現八「人を欺かない心!」
全員「孝!」
信乃「父や母を大切にする!」
全員「悌!」
小文吾「兄弟と仲良くしよう!」
それぞれの珠の意味を口にする犬士たち。
曲終了後、幕が下ります。
七人の八犬伝。
七人のトップスタアの八犬伝。
良かったです…。
素晴らしかったです…。
会場は盛大な拍手の嵐。
そして…、

☆グランドフィナーレ☆
幕が上がって、流れる音楽。

♪花のように夢のように

女性ダンサーさんに引き続いて、男性ダンサーさん、法被姿の太鼓奏者の女性お二人の礼。
続いて、ダンディ団のお三方と親方。
親方も一緒にダンディ団と同じ振り付けを。
続いては薔薇組。
二人で並ぶとサボテンの踊りの振り付けをした後、礼。
続きましては次は大神さんとかえでさん。
笑顔でご挨拶すると、お約束の「でこつん」でございます。
お次は今回の客演のお三方。
雲国斉先生と千葉助さん、そして米田支配人です。
千葉助が「踊れ!にゃ!」とポーズをとると「猫踊り」のお二人。
おいおい!とツッコミをいれて礼。
そして、最後を締めますのは…花組です!!
下手側よりレニ、紅蘭、マリア、さくら、カンナ、アイリス、織姫の順に並んで礼をした後、歌に。

さくら「♪舞台は廻り いつか 幕が降りるけど
     熱い心が今日も 溢れる」
さくら・マリア「♪すべての人に」
さくら「♪いつも 愛を届けたい」
さくら・レニ「♪ともに手を取り歌を」
さくら「♪歌おう」

声で解るかもしれませんが、CD版でもハモってる箇所です。
この曲の間奏部分ではそれぞれがそれぞれらしいにポーズを取っていました。
さくらさんは凛々しく清楚な感じ。
紅蘭は手を前に中国風な礼、アイリスはスカートの裾を持って可愛らしく。
レニは「♪素晴らしき舞台」のときみたいに右手を前に差し出して、織姫はスカートの裾を持って優雅に。
マリアはスーツのポケットに手を入れて格好良く、カンナは両腕を胸の前で曲げて力強く。
あまりのらしさにマリアさんに見とれてばかりでしたよ…( ̄ー ̄)ゞ

そして二番へ。
縦に一列になって。
さくら・マリア「♪希望や夢を」
さくら「♪いつも 胸に抱きしめて」
さくら・レニ「♪涙を拭いて進もう」
さくら「♪明日へ」

二番も歌い終えると、今年もありました。CD版未収録の歌詞が。

全員「♪またいつの日にか お会いしましょう
    またいつの日にか 必ず
    さようなら 皆さま(上手の方へ礼)
    さようなら 皆さま(下手の方へ礼)
    ありがとう 皆さま(舞台中央へ礼)
    その笑顔(右手を向けて) その拍手(左手を向けて) 忘れません」

全員「♪花のように夢のように わたしたちはいつでもこの舞台にいます
    花のように夢のように わたしたちはいつでもみんなの中にいます
    花のように 夢のように」

さぁ、スーパー歌謡ショウもいよいよ最後です!

♪ゲキテイ

歌謡ショウのグランドフィナーレはやっぱこれですね!!
枡席以外の客席、総立ちです!
曲終了後。
さくら「たくさんの拍手、声援…どうもありがとうございます。(全員で礼)
    ラストのゲキテイをみんなで歌って踊るのはこうして恒例となっていますが、
    今回は新しく桟敷席がもうけられましたよね。
    そちらの方は、立って歌って踊る事も出来ずなんだか欲求不満かもしれませんが、
    「ゲキテイ」には振付けDVDがございます!
    さて、こちらの気になるお値段ですけど2838円です。
    もし、踊り足りなかったら、家に帰ってそれを見て一緒に歌って踊って下さい。
    よろしくお願いします。」

さくら「…さて。新しくなりましたスーパー歌謡ショウも、これが無くては終われませんね!」
はい!待ってました!!
これが無くてはね!
さくら「お二階の皆さまも!一階席の皆さまも!!
    そして桟敷席の皆さまも!心を一つにして、いきますよ…?
    全国の大神中尉に…、敬礼!!」
ビシッとキャスト、客席揃ってポーズの後、ポンッと銀テープが飛びます。
一層、歓声が上がる会場。
さくら「どうもありがとうございましたー!!」
幕が下りても、拍手は鳴りやみません。
当然、カーテンコールです!!
花組が手をつないで一緒に礼。
さくら「どうもありがとうございます。」
幕が下りて、今度こそ本当に終演です。
終演アナウンスが会場に流れます。

さくら「これにて本日の公演は全て終了いたしました。
    本日はスーパー歌謡ショウにお越し頂き、ありがとうございました。
    どうぞお気をつけてお帰りください。
    また新春歌謡ショウでお会いしましょう!」

最後の最後のアドリブでございます。
<貸切日>
「♪ゲキテイ」終了後。
さくら「太正浪漫倶楽部の皆様、ようこそ大帝国劇場にお越し下さいましてありがとうございました。
   スーパー歌謡ショウ初の試みの一つとして、この貸切公演ですが異様な盛り上がりを見せて(笑)
   中日明けで疲れた身体のいい刺激となりました。」

終演アナウンス
大神「太正浪漫倶楽部の皆様。
   最後まで御覧頂きありがとうございます。
   どうぞこれからもサクラ大戦を、また歌謡ショウをよろしくお願い致します。
   お気を付けてお帰り下さい。
   また新春歌謡ショウでお会いしましょう!」

<千秋楽>
「♪ゲキテイ」終了後。
さくら「たくさんの声援、拍手。
   そして、「♪ゲキテイ」を一緒に歌って踊ってくれて本当にありがとうございます。
   皆様が盛り上げて下さったおかげで、このスーパー歌謡ショウ。
   花のような、夢のような舞台は…大成功です!
   感謝の気持ちでいっぱいです!ありがとうございます!」

さくら「今回はスーパー歌謡ショウということで新たに桟敷席が設けられました。
   座り心地はどうですか?」

さくら「ありがとうございます。
   最後の「♪ゲキテイ」はね、立って踊れないんですが、
   でもきっと心の中で、一緒に歌って踊ってくれてると思います。
   そんな一体感がこのサクラ大戦の舞台の良いところですね。
   本当に…私はこの舞台が大好きです!
   スーパー歌謡ショウ第1回目でした。
   桟敷席など新しい試みがたくさんありました。フライングもありましたね。
   これからもいろんな事にサクラ大戦は挑戦していきたいと思います。
   そのいろんな事の一つがPS2で出る「サクラ1」。スーパーリメイク「サクラ1」!
   そちらの方もどうぞ応援して下さいね。よろしくお願いします。」

さくら「…さぁ、名残惜しいんですけれども
   やはりスーパー歌謡ショウも、これが無くては終われませんね!」
会場「待ってました!」って感じで大歓声。大拍手。
さくら「待っていてくれてありがとう(笑)
    お二階の皆さまも!一階席の皆さまも!!
    そして桟敷席の皆さまも!心を一つにして、いきますよ…?
    全国の大神中尉に…、敬礼!!」

ビシッと決まって。
さくら「ありがとうございました!!」
やっぱり、当然カーテンコールです!
幕が再び上がって、
さくら「スーパー歌謡ショウ第1回、大成功!!
   万歳!せ~~の!!」
さくらの合図でキャスト陣、一斉に手にしていたクラッカーをパンパン!と。

そして「♪光武」のメロディーが。
何と奈落より光武再登場!!
その手に「新春へつづく」と書かれたボードを持って。
さくら「みなさん、千秋楽にお越し頂きどうもありがとうございました!!
   また、新春公演でお会いしましょ~~!!!!」
ここで今度こそ、幕。
最後の最後の終演アナウンスはマリアさんです。

マリア「これにて本日の公演はすべて終了致しました。
    お暑い中、スーパー歌謡ショウにお越し頂きありがとうございました。
    どうぞ皆様、お足元にお気を付けてお忘れ物無きようお帰り下さい。
    また、新春公演でお会いしましょう。」

これにて、スーパー歌謡ショウ「新編・八犬伝」レポを終了させて頂きます。
長い時間、本当にお疲れ様でした。
今年は…本報告書作成に思ったより時間が掛かってしまい、記憶力との勝負でございました(^_^;)
至らないところも見受けられると思いますが、楽しんで頂ければこれ幸いでございます。
正解は…DVDで(笑)
次のレポは来る新春歌謡ショウ・東京公演となりますか。
それでは…また。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です